厨子4

厨子.4

<Jun. 2009>
材:ナラ、トチ(縮み杢、扉鏡板)、カツラ(抽斗内部)、錫合金鋳物
仕上げ:拭き漆
size:W : 450mm × H : 600 × D : 320

ナラを主材とした厨子です。
基本構造は厨子2、3を踏襲し、サイズアップを図りました。
サイズアップで気を付けたことは、
1.台輪と天板を、側板から左右5mm、扉から前に10mm大きくする。
2.前面を平らではなく、2400Rとして柔らかさを出す。
3.鏡板もR加工を行っています。(材の伸縮に対応する加工は幅のみ)
etc.


今回扉は端嵌めではなく框組みとしました。トチの縮み杢を生かしたかったためです。
扉の鏡板は目の細かいトチの縮み杢をブックでレイアウトしました。また、トチを生かすため外観全体は虎斑杢がないナラの柾目材、中の棚板では虎斑杢のある柾目材を選択しました。
鏡板を明るくするために、鏡板のみ柿渋の重ね塗りで目止めを行い極力漆が深く入り込まないようにしました。
また、扉のストッパーは向かって左側扉の把手内側に錫合金鋳物で角度を付けたものを取り付けてありますが、ふらつくことが懸念されるため、左右それぞれの扉の合わせ目にマグネットを埋め込んであります。外見からは判らないように合せ目1mm内部にあります。マグネットは左側と右側とで前後2mmの差を付けることで磁力により右扉が内側に入ろうとする力をストッパーが止めるようにしてあります。

把手、つまみですが、やはり市販のものでは物足りなさを払拭できません。
今回、錫(ピューター合金<錫:92 銅:3 アンチモン:5>、融点≒320度)合金で砂型鋳造しました。
抽斗の把手では、前板にボルト固定するためナットを鋳型に固定して注湯しました。
型そのものは発泡スチロールで成形しています。
冷えた時のヒケの具合、ナットの埋め込み強度やズレの確認等を試験しての制作でした。
融点が低いこともあり製作はそれほど難しいものではありません。強度を必要としない箇所であるなら今後も制作してみようかと思います。

余談ですが、最近、厨子(仏壇)をご本人がお元気な時にお造りになられたり、また、若い方でも小さな仏像を置かれて心の安らぎの時間を持てれている、そういうことも耳にしました。
仏像らしきものも彫りたい、と思ったりします。