今回はストレートに天板への蟻桟について書きます。多くの木工屋さんも書かれているとは思いますが、参考にしてもらえれば幸いです。わたし流です。
今まで蟻桟に二の足を踏んでいた人にも分かり易いように図も入れます。図の中の寸法は実数値ではなく割り切りの良い数値としていますので、実践される方は臨機応変に。
概要
作図に当たり、天板の大きさは1800mm × 900mm、蟻桟は100mm × 88mm(蟻=8mm)角の設定です。
蟻溝と蟻桟のすぼみは2mmとしています。わたしの場合450mmで1mmすぼませるようにしています。1.5〜2.0mmでやったこともありましたが、差し込む感覚がどうもしっくり来なかった。トントンと叩きこんでいると突然ガチッと止まってしまう感じがどうも馴染めなかったのです。ガチッと止まるということは材の痩で一挙に緩むのでは?と感じているからです。また、止まってから叩き込んでいて蟻桟木口を潰したこともありました。緩やかでしっくりとしっかり全体が締まる感じが好みです。それでもガンガン叩き込むことはしばしばあります。
切削するビットの刃角は70°です。広角過ぎやしない?カッコ悪う!と言われたこともあるのですが手元にある数十本の蟻ビットが軸径6mm、8mm、12mmの全て70°なので致し方無い。手作業の場合は80°にしたりすることもあります。
蟻溝の切削
二本の蟻桟を平行に位置決めするのは市販の規格通りの3-6合板を固定したガイドにスライドさせれば簡単に取れます。不安であれば合板を裏返して確認します。
蟻桟の内側を基準面とし蟻溝の切削位置をビットのセンターで取ります。ビット先端や溝開口部で墨付け、位置決めすると精度が出ません。
図では100mm幅の平行する2本の蟻桟の間を1200mm、外から200mmとしています。
内側の蟻溝センターラインはそこから20mm入ったところ、外側の差し入れ口は内側ライン+60mm、先端の止め位置は+58mmになります。
ルーターのビットガイドを用いる治具やルーターのベース外側をなぞる治具などを作り蟻溝を一挙に切削することもしましたが、天板に治具が乗り切らなかったり、サイズに汎用性がなく毎回のように作るのは非効率的であることから今はベース外側をなぞるガイド一本です。中央部分を粗取りしておくと綺麗に仕上げられます。
天板の伸縮を考慮して先端と後端に空間を作ります。蟻溝は蟻桟長-5-5mm、蟻桟の蟻部分の長さは蟻桟長-10-10mmとなり、5mm天板に掛かります。入り口の埋め木も同様です。ただし、これは2本の蟻桟をセンターにストッパーで位置決めする場合です。壁に天板を沿わせるカウンターテーブルなどでは蟻溝入り口で固定したり、蟻桟に脚を取り付けず天板の反り防止のみで入れる場合には末端付近でで固定したりする場合もあり、その際は非固定側のみに空間を作ります。
蟻溝の深さは蟻桟の蟻部分8mmに対して8.5mmと図では表していますが、わたしは結構ギリギリにしています。スケールの線の内(蟻桟側)外(蟻溝側)くらいです。技能専門校では1mmと教えられたのですがスカスカが気に入らなかったのです。
蟻桟の加工
蟻桟の蟻加工は、ビットでの切削抵抗を軽くするため傾斜盤で蟻の高さでビット切削に掛からない部分を前持って落としておくと綺麗に切削できます。
基準面となる内側の蟻から切削し設定値にします。
次にルーターテーブルのガイドはそのままの位置で外側を10mm程切削し、蟻溝にきつめに入る程度に確認調整します。
ガイドを1.5〜1.8mmずらします。一度に2.0mmはやめましょう。
蟻桟の後端に2mm厚の当て木をテープで固定、中央には1mm厚の当て木も固定します。写真では分かりやすいように6mm厚の当て木です。当て木は蟻ビットの刃に掛からない高さでの固定です。刃に当て木が当たると飛びます。蟻桟の先端、1mm当て木、2mm当て木の3点が直線となるように1mm当て木のみ移動させて調整します。。2ヶ所当て木するのはテーブルガイドの長さと蟻桟の長さとの関係です。蟻桟が短く先端から後端までガイドに沿うことができれば当て木は後端1ヶ所で済ませます。
ガイドを調整しながら切削を深め、蟻溝に蟻桟を差し入れて2/3〜3/4くらい入ればOKです。ただ溝も桟も切削による木繊維の荒れがあるため、軽くサンディングして荒れを落としてから入り具合を確認した方がしっかりとおさまります。荒れを落とさず終わらせてしまうと完成後に緩みが出てスカスカになることもあります。
2/3〜3/4の入りですが、タモ、クリ、クルミなど柔らかな材は2/3、欅、桜、樺、楢など堅い材は3/4くらいにしています。
以上です。
慣れてくれば様々な場面で活用でき、その有効性を知ることができます。
おまけ
蟻桟の切削、微調整用に脇取鉋、比布倉(ひふくら、樋部倉とも)鉋も手元にあるのですが、ルーターテーブルでの切削が非常に効率良く、今は使うことはほとんどありません。鉋は素晴らしい!と言ってるわたしって一体‥‥