依頼されたものではなく、わたしが持っている椅子の修繕の話。
二十歳の頃、女友達からもらい受けた椅子。彼女がバイト先から貰ったもので「ひろし、この椅子あげる」と言われて貰った。ほとんど座ることもなく専らモノ置きだった。そもそも当時は机が無い生活。
作られてかれこれ50年くらいになるだろうか。背もたれセンターが数ヶ月前にボロッとこぼれた。合板だから仕方ないか。で先日座ったら座板の接ぎがキレた。日常的に座ってはいないが修繕することにした。思い出らしい思い出も無く惚れ込んでいる椅子でもないけれど、何故か捨てない。
分解
先ずは座板に通された背もたれフレームの楔を削り落とし、コンコンと叩いて抜く。座板の接ぎがキレたのと同様に接着剤は既に劣化していてスピンドルともども容易に抜ける。
座板から脚部もコンコンと叩いて抜く。これも容易。座板の接ぎキレは1ヶ所だったけれど手で叩くと1ヶ所残してバラバラになってしまった。
接ぎ面を見ると材はブナ。国内産のブナだろうか?当時は豊富にそして安価に市場にあったのだろう。今では国内産のブナの入手は困難。背もたれのセンターを除いて全てブナのようだ。ねじれが生じやすい材ではあるけれど曲げやすいことも使われるひとつの要因だろう。
曲げ木の背もたれフレームからスピンドルと合板のセンターを抜く。スピンドルには破損箇所は無い。合板のセンターは指先でボロボロとこぼれる。どうして合板を使ったんだろう?合板は塗装されていても外気の湿気を吸い込み膨らみ、収縮することなく膨らんだまま乾燥し、また更に湿気を吸い込み膨らむ、を繰り返してボロボロと破損してしまう。わたしは合板を使うことがほとんどないのでよく判らないが、現在の合板はこんな現象は起きないのだろうか?
脚部は問題なさそうなので分解はしない。
修繕
修繕するのは座板と背もたれセンター。
座板は新調しようかと思ったけれど、そのまま集成し直すことにした。
接着剤カスを取り除いて接ぐ。上手く接げなかった箇所には契りを入れていく。全ての接ぎが終わったら裏側の面出しを行い蟻桟を前後に挿す。
接ぎキレや座板の反りなど経年で生じる恐れがあるため、わたしは板作りの座板には必ず蟻桟を入れ、接ぎ箇所には契り、もしくはその代用を用いている。「10年持てば良いんじゃないの?」とは決して思わない。
座板表側はやんわりと座刳りがされているので目違い払いと塗膜除去にサンディング。
背もたれセンターは、クリの残材を使って新調する。破損した部材をトリミングして形を整える。
着色してオイルフィニッシュ。元はウレタン塗装と思われるが自分用なので手っ取り早くオイルフィニッシュとした。着色も黒っぽくなったし艶もあまり無いけれど「まっ、いいか」。
組み立てて完成。
おわりに
量産品と思われる椅子。旋盤加工の脚部部材は中央付近でHで固定、四方転びの枘穴への差し込みはこの構造だと無理なく出来る。なるほどなるほど!
座板への四方転びの脚部差し込み枘穴、同じく背もたれ各部材の差し込み枘穴加工は素晴らしいと思った。どう枘穴開け角度を出したのだろう?そして、どういった道具を使って穴開け加工したのだろう?? www‥‥わからない‥‥
おぉ、かわゆい椅子、蘇りましたね。 Good Job !!!!
ウィンザータイプの椅子は、孔開が主要な加工部位ですからね。
現在の家具工場であれば、NC制御での開孔になるところですが、50年前ですと、そうですね
それでも椅子専門工場でしょうから、XYZ軸規制が可能なラジアルアームのボール盤で開けていたのでは?
みしょう さん宅には〈DELTA 18-900L〉の導入がこれらをフォローしてくれますので、ご検討くださいませ
こんにちは
ラジアルボール盤での加工、んむ、なるほどなるほど!
DELTA 18-900Lあれば容易でしょうね!
導入する余力がないので、CADで2方向から角度を取りジグで対応が今は現実的‥‥
余談:
5年前からこの時期に山椒の佃煮作っているのですが、昨年の4月に作り方をBlogで書いたところ、こちらへのアクセス数がこの1ヶ月で600件! わたし、木工屋なんですが‥‥