木目に倣うデザイン

今回、およそ1000Rと極端に曲がったトチの材でリクライニング チェアを作ることに。

リクライニングチェア斜視

木工屋を中心としたワークショップやセミナーなどで、原木を使った椅子作りを見掛けます。また、原木での椅子制作をメインにしている木工屋さんもいます。
わたしは「すごいなぁ!」と正直思います。わたしには出来ません。木工屋を志す前、原木で作られた椅子を見た時、その自由さ奔放さに強く惹かれ作ろうとしたことがありますが、自分の中に在る或る種の固定観念のようなものが邪魔をするのか、大胆なことに臆病なのか直ぐにバンザイしてしまいました。原木で作るのはその人が持つ個性と言うかセンスなんだろうとつくづく思います。スゴイッ!です。
わたしが出来るとするなら、今回のような極端に曲がった材を自分なりに材の個性を生かしたデザインをして制作するところまでです。原木をそのまま生かすことは出来ませんが材の個性を壊さないことはなんとか出来ます。

1000Rの材から制作

 

デザイン

製材されたトチの板材は、外円が1500mmほど、内円が1000mmほど、幅は600mmほど、厚みは45mmです。極端に曲がっていること、材がトチであることから歪みは大きいです。
割れが入っている芯部分を外し、内側を座板、外側を後脚に見当をつけます。
後脚のデザインは頭を抱えます。R内側に座を置くか、後ろに反らせるか。
内側に座を置くとゆりかご風で、前後の脚4本も作らねばならず、肘掛けが長くなるためにそれを支える束など部材の点数が多くなり、大きなRはゆりかごイメージのフレームの役割しか果たさない。構成も複雑‥‥
後ろに反らせると、Rがキツイのでそのまま背もたれには使えないため、後脚左右幅は肩幅より広くしなければならない。木目を切らずに後脚から笠木までどうラインを引けば荷重のバランスも保てるのだろう‥‥
等々。
最終的に後ろに反ったデザインにしたのですがキツイRが背、肩甲骨にどう当たるかは組み立てないと判らない。座板とのバランスを考慮しながら少し余裕を持たせて幅を決め、組み立て後に削ることにします。

座板は材の横使いで芯側の外Rを前。芯割れをを外したために奥行きは400mmを切ります。座面高が低いリクライニング チェアなので座板に太もも全体が乗ることは少ないものの斜度、荷重位置、座刳り位置は慎重になります。

扇形状の座板

 

制作

トチ材は綺麗なのですがあまり強度は期待できないため厚めに木取りをし枘も厚めで長めにします。2枚枘だと薄くなり弱くなるため12mm厚の凹形状をメインにします。
座板への蟻桟は左右の前後桟になります。後ろから挿し蟻溝を彫った前横桟を落とし込み位置決めします。
前横桟で前脚を固定するのですが前脚頭部が座板に収まる形としています。これで前脚の揺れを二重に抑えることが出来ます。

背板は今回板面としています。いつもは背に沿ったラインを作るのですが今回は真っ直ぐな面です。ただ笠木のRにあわせてあります。

以上です。
市場では直線的に構成するものが多くなりました。作者の顔が見えなくなっているようで寂しい気もします。

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