木工作業でちょっと工夫していることを幾つか。
- しらがきの後、白チョークでなぞる
- 立ち鉋での木口処理
- 木作り時に鉛筆でマーキング
- 板作り(挽き割り)時の反りを予想する
1.しらがきの後、白チョークでなぞる
しらがきで正確に墨付けしたものの、見辛いことがあります。
特に角鑿盤での加工時、照明を当てていても見辛いことはしばしばあります。左右に照明があれば良いのでしょうが、わたしは今もって左側のみなので、引いた墨線がしらがきの表裏によって見えない場合があります(老眼と言われれば、身も蓋もない!)。特に濃色材では見辛いです。
そこで、濃色材では墨付け直後に白チョークでなぞっています。
2.立ち鉋での木口処理
木口に鋸の切削痕を綺麗に落とし仕上げる時は立ち鉋を良く使います。
サンディングで仕上げた時もありましたが
- ベルトサンダーではサンディング痕が残る
- 手で当て木に巻いたサンドペーパーでは淵がダレる
ことから、立ち鉋が一番綺麗です。平台鉋は不向きです。
注意する点は淵を欠けさせないようにすることです。当て木を当てたり、面取りする箇所であれば立ち鉋を当てる前に済ませておく、などしています。
3.木作り時に鉛筆でマーキング
粗木取り→シーズニング→木作り、という手順になりますが、木作りの際、粗木取り時の面に手押しやプレーナーを掛けることは日常的なことです。
その際に、面全体に刃が当たっているかどうかを確かめなくてはなりません。バンドソーや傾斜盤での切削痕が残る面での基準面作りでは判断し易いのですが、一度手押しやプレーナーが掛かっている場合は判断し辛いものです。そこで、鉛筆でマーキングしておけばその消え加減で面が出たかどうかが直ぐに判ります。木作りを終えて枘加工等の墨付け段階で気が付き、部材を作り直したことも過去何度かあり、ちょっとした手間ですが重要な作業と位置付けています。
4.板作り(挽き割り)時の反りを予想する
例えば、寸五(45mm)の板から薄板を3枚取る場合の作業では、反りやねじれがほとんどない性の良い材であっても面出しと厚み出しでおよそ40mmになります。反りが出ないと仮定するとわたしのバンドソーの刃厚が2mmなので2回入れることになり、(40mm – 2mm × 2) / 3 = 12mm 、それを面を出し仕上げると10mm。
そんな材など存在するわけもなく、挽き割りする過程で材に反りやねじれは生じるので仕上がりで6〜8mm厚が取れれば良い方でしょう。下手をすると一枚は使い物にならず、残った2枚も仕上がると5mm程度で元の材の75%を無駄にしてしまうことになってしまいます。
材種、板の大きさや板目柾目、乾燥状態などによって一枚一枚暴れ方が違いますが、挽き割る際にどのように反るかを大まかに予想しておければ、それなりの厚みを確保できます。
以下の板目材の挽き割りは、わたしの経験からのものですが、一つの参考としてください。(2枚に挽き割る際も、木表側は厚目にしています。)
1=木表側、2=中、3=木裏側
1が最も反ります。
材の状態にもよりますが、木表側は白太(辺材)部分に引っ張られるため幅反り、縦反りともに大きいです。
2、3を挽く前は、1と逆方向に少し反りが出ます。白太の引っ張りから解放された反動です。
この時点で2+3の材の面出し、厚み出しはしません。挽き割ると2と3相互の引っ張りから解放されて反りが生じるからです。挽き割ると2はほぼ真っ直ぐになり、3は2+3時点より反りが大きくなりますが1ほどの反りが出ません。
挽き割りは
- 1≒14mm:反りが大きい(もっと厚くすることもある)
- 2≒10mm:ほぼ真っ直ぐ
- 3≒12mm:1ほどではないが反りが出る
という厚みで挽き割ります。8mm程度の厚さは確保出来ます。
この個人的な挽き割り寸法は、天然乾燥材を対象としています。このため人工乾燥材では全く違う反りやねじれが生じることがあります。
とくに人工乾燥材は、挽き割ると内側に反ります。これは乾燥室で含水率が8%程度にまで下げられた後、自然環境下で表面が外気に慣らされて外側は含水率が高く膨張、内部は低い状態であるため内側に引っ張られる現象が起こると考えます。急激な細胞内の放湿・吸湿現象の影響でしょう。人工乾燥後10年以上経過した材も内側に反りましたから、細胞が随分痛めつけられたものと思います。挽いた後シーズニングで反った内側が膨張して反りが戻るといった現象は起きません。
ちなみに、人工乾燥は材を100年分劣化・老化させる、と材木屋さんから聞いたことがあります。木工屋として制作した家具を末長く使ってもらう、付き合ってもらうためにも可能な限り天然乾燥材で制作し続けたいと思います。
補足:バンドソーについて
わたしが所有しているバンドソーは刃幅が15mmで、挽き割り向きではありません。が、挽き割りでも活躍させています。購入時点では250mmが最大でしたがマシンの上部せり装置の自作や保護カバー改造などで300mmまで切削できるようにしています。
難点は、
- 材を強めに押すと刃が左右に流れ易い
- 頻繁に刃の交換、目立てが必要(切れなくなると、刃が左右に流れ易い)
- 刃が細かいため、挽き割り時間が長い
- etc.
また刃幅が狭いためか、サイドのガイド板と刃の切削角度をガイドを移動させる度に平行にセッティングする必要が出てきます。刃にテンションを掛けてから定規をくっつけて(ピタッとくっつきますよ)ガイド板とほぼ平行にします。適当なセッティングは写真のような大きなミスになります。さすがにこの時ばかりは泣きが入りました。欅でしたし‥‥