蟻桟について

蟻桟

天板など板物の反り止めには、古今東西を問わず蟻桟(吸い付き桟)が使われています。わたしも天板や抽斗前板の反り止め、板作りキャビネットでの天板と側板との接合、棚板の組みなど様々な場面で使っています。
今回、仕事で一枚板に蟻桟を入れる際に板の反りが開いたV字であることに今更ながら気付き、少し材の反りや動きについて整理してみようと思いました。加工の詳細は木工屋さんそれぞれですので書きません。
最もシンプルで最も多用されている一枚板の天板を例として書いていきます。解り易いでしょうし、数枚の接いだ天板にも参考になると思います。

材を理解する
天板

先ず、天板とする材が乾燥する過程でどのように反りが生じるか、です。天板の木口
天板用に製材された一枚板は、大別すると二つに分けることが出来るでしょう。
最大限の幅を確保するには芯持ち、もしくは芯の際となりますが、性の良い材なら割れも無いでしょうがそんな材は稀で先ず割れが生じます。幅が取れても芯持ちはやはり嫌われます。木表の表情は中央付近が板目でほとんどが柾目です。
もうひとつは芯部分から離れたところの材となります。こちらは木表の赤身部分が木裏よりはるかに少なく、赤身のみで幅を決めると結構小さくなるため入手している材によっては木裏を表面で使用する場合もあります。一般的に木裏使いと言いますね。こちらの表情は木表、木裏ともほとんどが板目です。
図で簡単に表しました。どちらも木表が縮み木裏側が反りますが、前者の反りは中央付近の板目部分がほとんどでV字型となります。柾目部分は反るというよりも収縮です。
後者の反りは全体が板目であるためにU字型となります。

蟻桟

蟻桟も木です。当然反りも生じます。解り易く言えば「木目は真っ直ぐになろうとする」ということです。粗木取りしてシーズニングを済ませると良く判ります。
蟻桟に最も適しているのが四方柾、次に柾目部分に蟻加工、適さないのが板目部分に蟻加工、になるでしょう。また蟻桟の側面は木目が真っ直ぐに越したことはないのですが、それなりに木目は曲っているものです。蟻桟の木口

(A)であれば申し分ないのですが、(B)(C)で表したように「木目は真っ直ぐになろうとする」木の性格を理解して天板の反りと反対側に反る蟻桟にしてそれぞれの反る力を相殺させる、と良いでしょう。蟻桟の側面

下の写真左が適した向きの蟻桟で反りが相殺され、右が適さない向きの蟻桟で天板と同じ方向に反りが出る。(写真は裏向け、蟻桟は仮置きしたもの)

蟻桟の長さ

天板のV字、U字の反りから蟻桟の長さにも気を配る必要性が出てきます。
V字、U字とも通し蟻であれば全く問題ないわけですが、全体のデザインから止め蟻が一般的です。
V字の場合は止め部分が大きくてもさほど問題は無いわけですが、U字の場合は木端部分も反ると考えておいた方が良く、止め蟻の場合は出来るだけ通し蟻に近い長さを確保すべきでしょう。経年変化で両端が跳ね上がってきます。

寄せ蟻

今回、加工している材は栓です。芯近くですが幅が950mm超で製材されて数十年経過した充分に落ち着いている材です。蟻桟も無ければ無いで済むのですが気が弱いわたしは蟻桟を入れました。申し訳程度の蟻桟なのであまり使わない寄せ蟻としました。寄せ蟻
わたしが寄せ蟻をあまり使わないのは、写真でも判るように蟻桟端っこに吸い付きが効かない部分が出来るからです。今回やってみる気になったのは天板の反りがV字で材も充分落ち着いていたからです。
外観の見栄えという点で寄せ蟻は良いのですが、一枚板の経年変化を考慮すると適、不敵を検討すべきと思います。

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