タグ別アーカイブ: 寄せ蟻

クリのリビングテーブル

リビングテーブルの制作依頼です。
当初、「材はクリ。サイズはw : 1,000mm × D : 500 × H : 450。デザインは任せます。6月中に欲しい。」とのこと。デザインは任せますと言われてもそれなりに納得してもらいたいものです。で、5度傾斜の留め隠し蟻組みや天秤差しなどのデザインを4点提案したものの「板作りは好きではない。トチのサイドテーブルのデザインが気に入っている」。お任せデザインでも具体的なイメージ提案は必要ですね。
トチのサイドテーブルの天板と脚の組みは三方留め風。天板には脚の4分の1サイズの枘と斜面接着、懸念される天板内側への倒れ込みは横桟が入るために強度は確保されます。留め隠し蟻組みや天秤差しは精度が必要なのは当然ですが、組んでしまえば強度は全く問題ありません。
ところが今回はデザイン上横桟(幕板)は入れたくない。対角線に桟を通そうとすると蟻桟の高さで視界に入ってしまう‥‥。最終的に隅木を枘組することにしました。

 

斜視

 

神経ピリピリの制作

図面ではどんな形状も描くことが出来ますが、制作する段になると加工順を頭に置き、ひとつひとつの部材に加工精度が求められます。天板への脚と隅木の枘穴加工も手作業です。もっともピリピリするのは40mm厚の天板と45mm角の脚の傾斜面切削です。傾斜角は51.5度。天板と脚ともに傾斜盤で切削したい。天板の切削は可能だろうか?? 続きを読む クリのリビングテーブル

残ってた材で子供椅子2

2019年2月に、姪っ子の息子とまだ生まれる前の娘に子供椅子を作った。子供たちはスクスクとデストロイヤーに成長している。
先日、姉からメールが届いた。「椅子の脚、折れちゃった」
座板の側に挿した前脚の枘が折れたよう。椅子は何脚も作ってきたけれど破損は初めて。チビちゃんと思って甘く見ていた。男の子はデストロイヤーになるのだ!!すでに襖はおぞましい状態らしい‥‥
ちょうど端材の整理を始めていたので「新しく作るよ」

折れた脚

デザイン

前回作ったこの子たちの椅子は、中途半端に残っていたタモ材を使い、成人向けの縮小版に近い構成だった。
今回の破損から、『子供椅子は頑丈が一番!』と思った。どんな使い方をするか全くわからない。成人のように上品に使うことはない。そもそも椅子の概念などない。
しばしば見掛ける子供椅子は、丸めの座板に丸棒の脚を通して楔を刺す、というもの。今になってその形状が理に叶っている!と感じた次第。
と言ってはみるものの、わたしも木工屋、それなりに工夫を凝らしたい。
「頑丈 + 木工屋」で端材を確認しながらイメージを膨らませデザインする。
楕円の座板を框組みの脚部で支える、座板の反りは蟻桟で抑える。円の座板も考えたけれど、横長の楕円形にした。あっち向いたりこっち向いたりのやんちゃ坊主向け。だから座は平面。

楕円の子供椅子 続きを読む 残ってた材で子供椅子2

テーブル改造2

テーブル改造 こちらは小さく!

夏前にご依頼いただいたテーブル改造。
栓の一枚板テーブル(1500mm × ≒950 × t:60)を小さくするという課題です。
テーブルサイズを950mm × ≒950とし、残りの材を天板t:30としてテーブルに添えるワゴンにして欲しい、とのことです。何でもこなすのが「木工屋みしょう」なので‥‥
ご依頼された方は設計士、加えてお父様がどうも宮大工さんのようで‥‥木のことは良く判ってくださっているので図面、構造の説明もスムーズです。

テーブル縮小

天板を切る前に表の面を出すためにひたすら鉋を掛けます。裏返して厚みを整えるため鉋を掛けます。そして天板をカット。寄せ蟻を入れて脚を組み付けます。テーブル完成。

ワゴン制作

天板は通常の木目とは逆となります。正面が木口で、奥行きが500mm、幅が≒950mm、厚みが30mmという天板を作らなければなりません。わたしが所有するプレーナーの切削幅はmax500mmですが横方向になるため使えません。手鋸でひたすら挽き割りです。丸一日掛かってしまいました。シーズニングしそして鉋掛け。側上部の横桟と寄せ蟻の桟を組んだ梯子を横方向に前後2本入れて天板完成。
残った材で抽斗を制作。無駄なく栓を使いました。

この勢いというか上がったテンションで、8月のブログで書いたように扉を端嵌めし、側板上部を背面から蟻で入れ、側板と底板とを隠し蟻。こういった時間、木工屋の喜びですね。好きです。
8月末に完成していたのですが、搬入は9月22日となりました。

写真は逆光であったため、明るくしたりコントラストを付けたりしたので見辛いかもしれません。

蟻桟について

蟻桟

天板など板物の反り止めには、古今東西を問わず蟻桟(吸い付き桟)が使われています。わたしも天板や抽斗前板の反り止め、板作りキャビネットでの天板と側板との接合、棚板の組みなど様々な場面で使っています。
今回、仕事で一枚板に蟻桟を入れる際に板の反りが開いたV字であることに今更ながら気付き、少し材の反りや動きについて整理してみようと思いました。加工の詳細は木工屋さんそれぞれですので書きません。
最もシンプルで最も多用されている一枚板の天板を例として書いていきます。解り易いでしょうし、数枚の接いだ天板にも参考になると思います。

材を理解する
天板

先ず、天板とする材が乾燥する過程でどのように反りが生じるか、です。天板の木口
天板用に製材された一枚板は、大別すると二つに分けることが出来るでしょう。
最大限の幅を確保するには芯持ち、もしくは芯の際となりますが、性の良い材なら割れも無いでしょうがそんな材は稀で先ず割れが生じます。幅が取れても芯持ちはやはり嫌われます。木表の表情は中央付近が板目でほとんどが柾目です。
もうひとつは芯部分から離れたところの材となります。こちらは木表の赤身部分が木裏よりはるかに少なく、赤身のみで幅を決めると結構小さくなるため入手している材によっては木裏を表面で使用する場合もあります。一般的に木裏使いと言いますね。こちらの表情は木表、木裏ともほとんどが板目です。
図で簡単に表しました。どちらも木表が縮み木裏側が反りますが、前者の反りは中央付近の板目部分がほとんどでV字型となります。柾目部分は反るというよりも収縮です。
後者の反りは全体が板目であるためにU字型となります。

蟻桟

蟻桟も木です。当然反りも生じます。解り易く言えば「木目は真っ直ぐになろうとする」ということです。粗木取りしてシーズニングを済ませると良く判ります。
蟻桟に最も適しているのが四方柾、次に柾目部分に蟻加工、適さないのが板目部分に蟻加工、になるでしょう。また蟻桟の側面は木目が真っ直ぐに越したことはないのですが、それなりに木目は曲っているものです。蟻桟の木口

(A)であれば申し分ないのですが、(B)(C)で表したように「木目は真っ直ぐになろうとする」木の性格を理解して天板の反りと反対側に反る蟻桟にしてそれぞれの反る力を相殺させる、と良いでしょう。蟻桟の側面

下の写真左が適した向きの蟻桟で反りが相殺され、右が適さない向きの蟻桟で天板と同じ方向に反りが出る。(写真は裏向け、蟻桟は仮置きしたもの)

蟻桟の長さ

天板のV字、U字の反りから蟻桟の長さにも気を配る必要性が出てきます。
V字、U字とも通し蟻であれば全く問題ないわけですが、全体のデザインから止め蟻が一般的です。
V字の場合は止め部分が大きくてもさほど問題は無いわけですが、U字の場合は木端部分も反ると考えておいた方が良く、止め蟻の場合は出来るだけ通し蟻に近い長さを確保すべきでしょう。経年変化で両端が跳ね上がってきます。

寄せ蟻

今回、加工している材は栓です。芯近くですが幅が950mm超で製材されて数十年経過した充分に落ち着いている材です。蟻桟も無ければ無いで済むのですが気が弱いわたしは蟻桟を入れました。申し訳程度の蟻桟なのであまり使わない寄せ蟻としました。寄せ蟻
わたしが寄せ蟻をあまり使わないのは、写真でも判るように蟻桟端っこに吸い付きが効かない部分が出来るからです。今回やってみる気になったのは天板の反りがV字で材も充分落ち着いていたからです。
外観の見栄えという点で寄せ蟻は良いのですが、一枚板の経年変化を考慮すると適、不敵を検討すべきと思います。