今年2月に近所のおじさんから頂いた古家具について具体的に見ていきます。
半軒の水屋箪笥と重ね戸棚<一軒水屋>を見ていくのですが、どちらも作られた年代がどこにも書かれていないので定かではありません。大正から昭和初期のものかと思われます。また、建具の作りなどからそれぞれ違う制作者によるものと判断しています。
今まで目にした古家具の大雑把な印象は、外観はそれなりに形となっているものの隠れているところは本当に適当、見栄え良ければそれで良し!です。鉋が入っていることはほとんどありませんし、塗装などの表面処理もほとんど行われていません。材の伸縮なんのその!です。ただ、枘組み方法などはきちんとした仕事がされていて見習わねばならないと思うところもあります。現在手元にあるので、組みを外すなどして正確に検証できることはありがたいことです。
また、採寸して簡単な図面を引き、複製できるものがあれば実際に制作して疑問点、感想なども加えていきたいと思います。名称、呼称など地域によって違うこともあり平易な言葉で書いていくつもりですが、明らかに違う使い方をしているようでしたらご指摘ください。
今回は建具について。
水屋箪笥<半軒>
水屋箪笥では、上中段の2種類の建具を見ていきます。下段は中段と同じ構造です。
上中段ともに縦框と上下桟の組み方は「上端留め形通し枘接ぎ」です。擦り溝に隠れる部分に留めが掛からないように上桟で5mm程度、下桟で3mm程度多めにとっています。通し枘には楔が入れられています。古家具で使われている楔は大きめのものが多いです。杉などの軟材が使われることによるのでしょう。
鏡板の取り付けは、上段(建具A)は四方の枠の溝に入れていますが、中段(同B)では縦框に蟻溝(?)、上下桟は鏡板の厚み分薄くなっており鏡板を差し込む構造です。固定は上下桟に釘です。
中段の鏡板の取り付けについては、そういった手法もあるか、ですが、鏡板の伸縮に対応はできても反りに対しては不十分かと感じます。
重ね戸棚<一軒水屋>
重ね戸棚での建具は3種類あるのですが構造が同じでサイズ違いです。
縦框と上中下桟 の組み方は「面腰の通し枘」です。楔は入っていません。
厚みと幅を採寸すると、
- 縦框:厚み=20mm 幅=35mm
- 上桟:厚み=16mm程度で適当 幅=41mm
- 中桟:厚み=12mm程度で適当 幅=36mm
- 下桟:厚み=12mm 幅=40mm
で、精度があるのは縦框と下桟、上中桟の厚みは適当といった具合です。
上部の柵状の嵌め板部分を裏から支える横桟の枘は長さ、幅とも適当です。おさまればOKといった感じです。下の鏡板の取り付けは、縦框と中桟には5mm程度の欠き取り、下桟は12mmと薄くしてそこに釘止めとなっています。
下桟の擦り溝に入る箇所ですが、縦框の木口を覆う形状です。
数年前、わたしのお客さんが中古でネット購入した戸板の下桟も同様の形状となっていたことから、生産地域特有の構造ではないと思われます。木口の擦れで溝が削れることを抑えるために有効なのか?と思います。
縦框と横桟は「面腰の通し枘」となってはいるのですが、疑問を持ったところが何箇所かありました。
ひとつは、表側は面腰なのに裏側まで通さず枘の胴付きの面が2段になっていて深い部分が枘幅まで欠き取られていること。
またひとつは、その面腰部分から枘を伸ばす形状になっていないこと。
実際にSPFを使って複製したのですが、どうしてこんな面倒な形状にしたのか解りません。非常に生産効率が悪く、横桟の厚みが適当でありこの形状が強度面で優れているとはとても思えないのですが、逆に適当な厚みでは有効なのか?とも思ったり……
次回は、内容、時期とも未定です。