リビングテーブルの制作依頼です。
当初、「材はクリ。サイズはw : 1,000mm × D : 500 × H : 450。デザインは任せます。6月中に欲しい。」とのこと。デザインは任せますと言われてもそれなりに納得してもらいたいものです。で、5度傾斜の留め隠し蟻組みや天秤差しなどのデザインを4点提案したものの「板作りは好きではない。トチのサイドテーブルのデザインが気に入っている」。お任せデザインでも具体的なイメージ提案は必要ですね。
トチのサイドテーブルの天板と脚の組みは三方留め風。天板には脚の4分の1サイズの枘と斜面接着、懸念される天板内側への倒れ込みは横桟が入るために強度は確保されます。留め隠し蟻組みや天秤差しは精度が必要なのは当然ですが、組んでしまえば強度は全く問題ありません。
ところが今回はデザイン上横桟(幕板)は入れたくない。対角線に桟を通そうとすると蟻桟の高さで視界に入ってしまう‥‥。最終的に隅木を枘組することにしました。
神経ピリピリの制作
図面ではどんな形状も描くことが出来ますが、制作する段になると加工順を頭に置き、ひとつひとつの部材に加工精度が求められます。天板への脚と隅木の枘穴加工も手作業です。もっともピリピリするのは40mm厚の天板と45mm角の脚の傾斜面切削です。傾斜角は51.5度。天板と脚ともに傾斜盤で切削したい。天板の切削は可能だろうか??
天板の4辺はRをデザインしており、脚の位置は30mmずつ内に入っています。そのため先ず4角を落とし≒85mm × 40の小さな面を傾斜盤のガイドに沿わせながら51.5度の切削をすることになります。材の保持と緊張で汗が流れます。切削をなんとか終わらせるとヘナヘナです。傾斜盤でのこの加工はこのサイズが限界です。
脚の傾斜切削は問題ありませんが、枘の男木があるため天板との当たりを確認することが出来ません。試作用に脚と同サイズを用意して同じ加工をして男木を取り除けば確認できます。
天板4辺のR加工は3次曲面となるため手鉋の切削になります。脚との接着面は0.5mmほど残し組み終えてから仕上げることになります。
隅木は量産椅子のフレーム固定などに使われています。ビス留めですが。わたしはビスが不得意なので枘組みとしています。内側への脚の倒れ込みの補強となるため12mm × 35mm × 30mm長の枘構成です。脚、天板との組み固定ではクランプ締めするため隅木のR加工は組み上げてからシコシコと南京鉋で切削することになります。
天板に脚と隅木を指すと傾斜面の接着が綺麗に収まり胸を撫で下ろし、プレスで固定。
蟻桟を入れる前に隅木の切削です。角を15mm残しての切削です。
蟻桟は久しぶりに寄せ蟻としました。通常は通しなのですが天板4辺R面を重視し寄せ蟻としました。蟻桟センターに丸棒で位置決めしています。
完成!オイルフィニッシュ!写真撮影!
やっと安息の眠りにつける!と思ったのも束の間。隅木に残した15mmの角が気になってなかなか眠れない。
翌日朝一から隅木の角落とし。固定した蟻桟が南人鉋の邪魔をする。小刀を使いながらなんとか削り上げる。削り終えて外観チェック。ほっ!!
やっと完成!オイルフィニッシュ!写真撮影!
神経ピリピリの制作も無事終われば安酒も一味違う!