木目に倣うデザイン<テーブル>

15年ほど前に岐阜・各務原の材木市で購入したトチ板を天板にして、極端に曲がっているトチを脚部に使用するダイニングテーブルの制作です。

 

デザイン

まず材がそれぞれどのような材であるかを確認します。粗木取りの部材
天板は長さが2100mm、幅が700〜850mm、厚みが45mmで挽かれています。購入後直ぐに虫が付きやすい白太部分はある程度落としていたので900mmほどの幅はこの程度になっています。トチ特有のキラキラ、杢杢感は強くありません。また、木表側は白太部分が多いことから今回は木裏使いとなります。45mm厚で挽かれていた材は自然乾燥で反りと捻れが出ていて仕上がりは40mmで落ち着きそうです。サイズは1800mm × 700〜850 × t:40といったところでしょう。
脚部の曲がっている材は、厚みが60mmで挽かれています。反りと捻れを落とせば55mmは取れます。Rは内径と外径の違いは勿論ですが2枚それぞれが違います。そこで木目に倣い左右それぞれの脚とスリ脚をアンシンメトリーにすることにします。

 

CADで作図

構成材を採寸しながらイメージを膨らませてアイディアスケッチを出し、脚とスリ脚とする部材のRをおおまかに計りCADで図面を引いていきます。テーブルのCAD図面
画像では天板の白太が多いところを左側と見ています。
左側は白太で薄い箇所があるため蟻桟を右側よりも中央寄りとし、スリ脚と脚はキツメのR材を使い幾らかでも左端の外側を支えるようにします。
因みにそれぞれの内径は、スリ脚左が500R、右が800R、脚は左が1085R、右が1360Rとなります。外径は内径プラス100mmを基準にしています。
左右の蟻桟の中央から20°開きの対角線を引き、その線上に脚が立つことになります。左右のRが違うため脚の傾斜角も左78°、右81°となります。中途半端な傾斜角ですが材のRに合わせて脚の下から1/3くらいまで真っ直ぐに立つことを意識したものです。見た時の安定感と耐荷重の考慮です。

構成部材

天板の平面(上面)図上では20°開きの対角線が基本線となるので天板に墨付けし、スリ脚、蟻桟位置も墨付けしておきます。
また立面図は平面の対角線図を10°傾斜させて脚の図を描きます。天板とスリ脚の厚みが決まっているので脚の傾斜は脚上下の端を直線で結びそれを基準にして蟻桟との相欠き、スリ脚との枘の位置決めと隅付けができます。

 

加工

天板の面出しは表面から始めます。
平台鉋の面出しと同じ要領ですが、下端定規にに替わるものがあると綺麗に効率良く作業が進められます。

わたしは木曽檜の角材を使います(巻障子制作時の残りです)。狂いや反りがほとんどなく重宝しています。長さ1000mm超のものを4本、2000mm超のものを2本使います。もちろん4本、2本ともきちんと基準面、幅、厚みはそれぞれ共通です。長いものは自重で曲がらない太さが必要です。
以前は短いものは両端に2本置いて目視確認が主でしたが、4本置きその上に2本置くと隙間の確認などで凹凸や捻れなどがはっきり判ります。お勧めです。
裏の面出しは両木口に毛引きで厚みを決め仕上げていきます。裏返す前に作業台でカタコトやってデッパリをチェックしておくと効率的です。
裏の面出しを終えたら蟻桟のセンターライン、脚の位置の対角線を墨付けしておきます。
スリ脚の枘穴位置はCAD頼みとなりました。枘形状も3枚枘の変形としています。斜め圧着となるため組み込み時の枘破損を危惧してのものです。蟻桟との相欠き箇所もCADからです。

テーブルの内側になる脚の中央側のRは上部より下部が10mm細くしています。その加工は枘加工、相欠き加工を終えてから行います。基準線や基準面に伴う枘加工などは最初に済ませておくのが基本です。

スリ脚間には貫が入ります。脚部の内側への倒れ込みを抑えるためです。スリ脚と貫とは包み蟻形相欠き接ぎでジョイントボルトでの固定となります。取り付けは本体組み立て一番最後です。

 

仕上げ

蟻桟と脚部は濃色で着色です。脚部は濃色が好きです。脚部が白っぽいとどうしてもテーブル全体が浮いて見える印象があるからです。また、トチのキラキラ感が濃色の中でほんのり浮き立つのは結構好きです。仕上げはオイルフィニッシュ。

脚部の着色

天板の表面と木口は目止めシーラー処理を行ってからオイルフィニッシュです。オイルだけだと染みや汚れ、傷がどうしても付き易いです。トチのように柔らかく白い材だとなおさらです。日常使いですからメンテナンスは簡単な方が良いのですがウレタン塗装だと経年変化の楽しみが無くなります。オイルのみより目止めシーラー処理を行った方が経年変化は遅くなりますが、それなりに楽しめます。

以上です。
耳付きの天板も「木目に倣う」と言えなくもないですね。
前回のリクライニングチェア、今回のダイニングテーブルも面を重視したものではなく構造材として使っています。木目を切らなければ強度面は安心ですし見た目も自然です。また、ここまで太めの材の曲げ木は難しいですし、積層だと「なんだかなぁ‥‥」です。
扱いづらい材も有効に活用していきたいものです。

 

おまけ

お〜い、それはちがうだろ?!

ヤモリとアマガエル

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です