譜面台をスマートなデザインに‥‥

イメージスケッチ → アイディアスケッチ → 作図 → 制作 へと通常通りのプロセスでの譜面台の制作です。主材はマホガニーです。
スマートな部材構成、完成時のバランス、使い勝手に重点を置いてデザインして行きます。

譜面台3

念頭に置く項目を抽出

家具デザインではとりわけ機能を満たしていることが最重要となります。もちろんこの譜面台も機能を満たしていなければならず、その機能を満たした上で独自のデザインを加味して行きます。今回その項目は

  1. 部材数を少なくするために、脚部の支点は3箇所とし支点の一つを支柱(メインパイプ)とする
  2. 3箇所の支点間の角度は60度
  3. 譜面板の高さは、椅子に座って中心高:850mm、立った場合は1,200mmが最良位置と判断
  4. 上下動させる支柱(メインパイプ)に入るインナーのスライド量はどれだけ必要か
  5. 支柱下部の枘組み部分の芯材はどれだけ入れれば良いか
  6. 支柱、インナーとも木製であることから太くなるため、どこまでスマートにできるか
  7. 譜面板の高さが変わることで、譜面板の位置が前のめりになったりしないか、不安定にならないか、その際に支柱を支える二つの補助脚が足位置の邪魔にならないか、その長さはどれだけ必要か、とバランスを考え70度傾斜を判断
  8. 譜面板の大きさは、縦:305mm+20mm、横:228mm×2+20mm×2、が最小サイズとなる
  9. 支柱の高さと譜面板の角度が可動箇所となるため、固定具(ノブ)をデザインする
  10. etc.

必要な寸法は決めますが、譜面板、補助脚、固定具のデザインはイメージするだけとし決定は後回しにすることにしました。それは現物が完成に近づいてきた時にイメージと現物とのギャップを小さくするためです。ただ、支柱のスライド固定の構造は決めておきます。

CADとにらめっこしながら作図していくのですが、脚部の60度の開き、支柱の20度傾斜、二つの補助支点の切削角度と位置など、関数計算が苦手なわたしにCADは重宝します。それでも頭の中は、60度傾いたり20度傾いたり上から覗いたり忙しなく回転しておりました。

加工

部品点数はそれほど多くはないのですが、支柱はインナーがスライドするために精度が必要なことは当然ですが、4枚構成の支柱内側は組んでからの接着剤の除去、面出しなどの仕上げが出来ないために気が張ります。インナーは鉋掛け1、2回分厚めにしておきます。

支柱と補助脚との枘加工は、60度30度にカットした治具を端材で作り角鑿盤加工での当て木にします。小さく作ると固定具とならなかったりするので被加工部材のサイズを確認して作ります。また、この治具は枘を組む際の当て木としても使えます。

スライド固定の部分ですが、支柱そのものに鬼目を使うことはしません。支柱の厚みが10mmと薄いこと、固定ネジを締めた際にインナーを傷付けないために1mm厚のアルミ板を組み込んだ専用のボックスを作り嵌め込みます。また、このボックスの上下はローズウッドの薄板を張っています。ここで木口が見えると綺麗じゃない。

インナーと譜面板との組み合わせ部分の材はB.チェリーです。角度調整箇所であるために糸鋸とサンダーで丁寧にR加工します。

支柱の固定ノブ、譜面板との角度固定ノブはローズウッドの削り出しで、ボルト頭部を包み込む構造としました。これも糸鋸作業です。切れる糸鋸刃は20mm厚のローズウッドを難なくこなします。(糸鋸について、次回Blogで書こうかと‥‥)

譜面台のノブ部分

完成

主材のマホガニーは濃淡の差があるために着色しました。赤味を帯びた上品な色合いに仕上がりました。
インナーのスライドですが、直立ではなく70度に傾斜していることもあり固定ノブが緩んだ状態ではスーッと静かに収まっていきます。

譜面板を框組みとしたのは軽量化とブック(譜面)とのイメージ整合によるものです。板作りだと蟻桟や端嵌めなどの反り止めも必要になり重くなり、伸縮による経年変化も気になります。

初めて制作するものは、個々それぞれに新たな知識が必要となってきます。「ピアノから食器棚」では分解するためにピアノ本体の構造を知る必要があり、メーカーによる構造の違いがあることから日本のピアノの歴史も学びました。「スプーン」などのカトラリーも手にした感触、掬い部分の形状、大きさなども心地好い機能美が必要となってきます。モノ作りの喜びの一つでもあります。

譜面台をスマートなデザインに‥‥」への2件のフィードバック

  1. ありがとうございます。
    次回は、ギタースタンドになるでしょうか‥‥

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