マホガニーと並ぶ高級材のチークは、国内の家具ではあまり目にすることはありません。見掛けるのはデッキチェアくらいでしょうか。
わたしも以前デッキチェア、テーブルを制作しました。
今回、あまり目にしないこのチークについて、材のこと、加工のことなどについて触れてみたいと思います。
チーク
「原色インテリア木材ブック」(著者:宮本茂紀)にはこう書かれています。
チーク タイチーク。Teak
クマツヅラ科。産地:タイ、ミャンマー、インド、インドネシア。木理:やや粗。比重:0.68。径:2m。環孔材的な散孔材。心材は淡褐色〜黄褐色〜褐色、ときに黒色の縞をもつもの(縞チーク)がある。辺材はほぼ白色。光沢があって美しく、独特の芳香がある。硬い割には加工が容易で、サンダーもかけやすい。弾力があるので曲げに強い。十分に乾燥したものは狂いが少なく、虫にも強い。木目はローズウッドのような華やかさはないが飽きのこない、しっかりとした主張がある。銘木中の銘木である。
ー前ページー
‥‥家具材になるずっと以前から、船の構造材、とくに甲板用材として重宝され、世界各国で高い評価を得てきた。‥‥<中略>‥‥
なぜチークが造船材として使われているかというと、それはチークには良質の油、木製タールが含まれているからで、これが鉄の腐食を防ぎ。釘やボルトなどを錆びにくくする。チークの木肌に触ると滑らかで柔らかい感触があり、機械油に似たような匂いがするのはそのためだ。またチークの木自体も酸化、腐食しにくく、酸や塩、水に強い。
チークの加工
自身で加工すると木材ブックに書かれている内容に肯けます。木工屋ですので実際に加工した際に感じた点を書きます。参考になれば幸いです。
1.チーク ≒ 欅 + 高野槙
わたしが所有するチークはタイチークですが今まで扱った材の中から、[チーク ≒ 欅 + 高野槙]という感触です。
欅と似ているのは、比重、硬さに加え石灰を持つものがあること、虫喰いがテッポウ。
高野槙に似ているのは、材が持つしなやかさでしょうか。
木材ブックには「木製タール」と書かれているのですが、タールというより「蝋」を感じます。高野槙の「蝋」分とチークの「木製タール」の成分は違うのでしょうが触った時の滑らかで柔らかい感触、材がしなやかさを持っていることは共通しています。
2.機械加工
十分に乾燥したチークは非常に安定しています。木取り時にチップソーを挟み込んだり反り返ったりすることはありません。
ただ、手押し鉋盤やプレーナーなどでの面出しは「木製タール」が刃にこびりつきます。たびたび溶剤で拭き取る必要があります。肥松などではヤニがこびりつきますがヤニと「木製タール」は全く別物です。「木製タール」の方が溶剤に溶け易いです。
また、わたしが持つチークは石灰を持っていて鉋盤の刃の摩耗が激しいです。テッポウの穴周りや木目に入り込んでいる目に見える白い石灰はワイヤブラシでも落ちきることはありません。白くなっていなくても木目には石灰を含んでいるようで刃を痛めます。石灰を含むのはこのチークが育った地質の問題なのでしょうか、それともチークが持つ潜在的な抗体能力なのかもしれません※1。
※1:”木とジョイントの専門家 阿部蔵之さんのwebサイトhttp://kurayuki.abeshoten.jp“に木の 抗体やダメージ修復、テッポウ虫詳細があります。
http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/28679
などなど。
3.手加工
手鋸、鉋、鑿、小刀などの手加工は小気味良いのですが機械加工と同様に「木製タール」が刃にこびりつき、石灰が刃の摩耗を早めます。鉋での刃当たりは欅とよく似ていますが、「木製タール」と石灰で小まめな刃研ぎが必要になります。
4.サンディング
木材ブックでは「サンダーもかけやすい」とありますが、わたしはそう感じません。サンドペーパーの番数にもよるかもしれませんが、わたしが通常使っている#320では蝋分で直ぐに目詰まりしてしまいます。この目詰まりは高野槙も同様です。高野槙ではサンディングせずに鉋で仕上げる、チークでは仕上げ鉋(刃物による切削)の後に毛羽立ちをサンドペーパーでさらっと落として仕上げる方法がベストです。
5.接着
ボンドによる接着ですが、タイトボンドⅢと瞬間接着剤<アロンアルファNo.3(232、232F)>とで比較しました。材には「木製タール」があるわけで、これがどれくらい影響するかの確認です。
まず接着面をウエスで乾拭きし接着剤を塗布して2時間圧着した場合、タイトボンドの方はわずかな力で剥がれますが、瞬間接着剤の方はしっかり固定されて剥がれることはありません。
これは水性のタイトボンドは粘性が低いものの「木製タール」で弾かれて木繊維に浸透しないこと、シアノアクリレートを主成分とする瞬間接着剤は浸透性が良いことによるものでしょう※2。
※2:当初わたしは木工用のシアノアクリレート接着剤は粘性を持たせるため亜麻仁油などを配合させており(Wikipedia)、その油分と「木製タール」が馴染み合って浸透が促され固形化すると思っていたのですが、東亜合成に確認したところ、そういったことはなく、粘性があるものの木繊維に浸透して固形化している、亜麻仁油などの粘性の成分は企業秘密とのこと。
ならば、接着面を溶剤(シンナー)で拭き接着してみよう。予想通りタイトボンドでも剥がれることはありませんでした。機械的な接着強度比較は出来ませんが部材の接着固定には問題ないと感じます。水性の接着剤を使う場合は。溶剤(シンナー)で拭き接着、瞬間接着剤の場合も溶剤で油分を除去した方がより効果的です。
6.仕上げ
チークが持つ滑らかで柔らかい感触を残すため、そのまま木地仕上げが良いのかもしれませんが、「木製タール」油分、茶系色、独特の芳香が抽斗ならば収納物に染みるようでわたしはオイルフィニッシュで仕上げます。木肌を覆うオイルフィニッシュでも滑らかで柔らかい感触は残ります。
以上です。
チークで小箱
今回はチークで小箱を制作しました。本体はチークで蓋の取手はトチの杢材、底板はナラです。本体の組みは天秤差しです。天秤差しは回を重ねるごとに三角の頂点が細くなってきます。手持ちの薄刃の鋸、鑿のサイズからはこれが限界でしょう。取手は後方から蟻桟として差し込み前部で位置決め固定しています。
おまけ
8月の長雨、どうにもならん!! けれど癒してくれるものもいる。
庭木にとまるオオミズアオという蛾
イシガメのウォーキング
オニヤンマが作業場に涼みに
前庭で採れた茗荷
作業場を覗くハグロトンボ
庭のヤマユリ