着色の憂鬱

わたしは積極的に着色する方ではありませんが、部材の色違いや濃淡の違いを解消するために使うことがあります。しかし、メーカーの見本のように上手く出来ないのです。
例えば、原液100%で塗った見本、水で50%に希釈した見本などを見比べておおよその濃さを試してみます。試し塗りの小さな面積の場合は良いのですが、いざ表面積が広い完成品への塗布となると、材自体が乾燥しているために塗布すると直ぐに乾き始め、全体を塗り終えた時点でムラだらけになっている。そのため、塗料を染み込ませたウエスで乾ききらないうちにベタベタに塗り、急いで乾いたウエスで拭き上げることになります。ムラは解消されます。しかし半日乾燥させれば毛羽立っているためサンディングし、ベタベタにまで塗らないものの再度塗り、拭き上げます。すると、例えば50%程度の濃さを求めていても100%近くの濃さになってしまう。
嗚呼、着色の憂鬱……

肘掛け椅子2017

肘掛け椅子2017 そこで、水性顔料2種類を比較することにしました。参考にしてもらえればと思いますし、読者の方からご意見などいただければ、と思っています。
あくまでもわたし個人の見解です。使用される際は自身の責任で行なってください。

水性顔料の比較

使用した水性顔料の2種は、

ポアーステイン(以下、PORE)<AQREX No.3000> ※今回は、マホガニーブラウン色   和信化学工業株式会社
使用感:乾燥後の色落ちは少ない。

アクアAPステイン SPライン(以下、アクア) ※今回は、SP-3600 ダークオーク色
 玄々化学工業株式会社
使用感:注意事項欄に「アクアAPステイン仕上げのままですと水によって溶解します。」とあり、実際に色落ちします。

1.1回目の塗布

顔料1に水2で希釈、ウエスで塗布しています。材は楢の共木で木目はほぼ同じ。

1回目の塗布では大きな違いは出ません。双方とも端の乾きが早いため色は濃くなります。POREの方が木目の中に顔料が入り込んでいるように見えたのですが、アクアの色が暗色であり木目が目立つだけです。

2.2回目の塗布

30分程乾燥させた後、2回目を塗布します。

POREの方は塗り重ねた部分が濃くなります。色を重ねた感じです。 対してアクアの方は、ウエスの水分で1回目の顔料が溶解し、2回目の塗布部分が逆に薄くなります。

3.乾ききる前にウエスで拭き上げる

双方ともある程度ムラも解消されます。

4.半日乾燥後、毛羽立ちをサンディング

POREは、1回目と2回目の塗り重ねそのままに乾燥している。 アクアも塗り重ねそのまま乾燥しているが、POREとは逆に2回目の塗布部分が色落ちしている。

5.原液と希釈液との比較

双方とも原液と希釈液との色の濃さがはっきりしている。 ただし、実際には着色後にオイルフィニッシュ、ウレタン塗装などが行われるため、この状態のままとは言えない。

6.オイルフィニッシュと水拭き比較

わたしは、リボスのアルドボスを通常使っているためこのオイルを塗布した面、水拭きした面とで顔料の落ち具合を確認します。多少は擦っています。原液塗布部分と希釈液塗布部分ともにオイル塗布、水拭きしています。

POREは、オイルではほとんど顔料が落ちません。しかし水では原液塗布部分で顔料が落ち希釈した濃さに近くなります。原液部分を拭き上げていないことが原因していると思います。
アクアは、オイル、水とも顔料が落ちます。オイルでは吹き上げていない原液部分の顔料が主に落ち、水拭きでは原液、希釈液とも材に定着していない顔料が落ちてしまい同じくらいの濃さになる感じがします。

以上です。

どちらの水性顔料が優れているかという比較ではありません。 わたしが着色して仕上げていく際、双方の顔料の特性を知っておけば効率的な作業が出来ると思っての検証です。
一見、POREが使い易いようにも思ったりするのですが、重ね塗りしたところが濃くなりムラとなるため、それこそ全体をベタベタにし吹き上げなければムラを無くすことは出来ない。反してアクアは、一旦乾燥しても慌てずに顔料を染み込ませたウエスで塗りながら拭き上げることが出来ます。 どちらにしろ、ムラを無くそうとすると希釈しても原液の濃さに近くなってしまう。
嗚呼、着色の憂鬱は続く……

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