古民家への階段書棚の制作です。
階段横側を正面とすると、センターに背板(中仕切り)が入った正面と背面がシンメトリーの書棚となります。
踏み板とフレーム(框材)などは栗。背、底、側などの板部分は杉を使用し、仕上げは柿渋となります。経年変化で古民家に馴染んでいくことを意識しました。
概要
傾斜角は41度で緩やかに設定しています。踏板の段差は一番下が200mm、他は全て210mm。踏み板部分のスペースは幅780mm、奥行き260mmと一般的な階段よりも僅かですがゆとりがあります。このゆとりにより上下分割の下段には手摺りを省くことが出来ました。本来ならば最下段まで手摺りがあった方が良いのでしょうが、最下部まであることでの圧迫感(広い部屋が狭くなる)、コスト等を検討してこのデザインとなりました。
手摺りの高さは、上の梁がある廊下手摺りの下に収まるように710mm、踏み板中央付近では850mmくらいとなります。
段数は9段で奇数段の下は背板(中仕切り)を入れず明かり取り、飾りスペースとしています。
また設置場所ですが下の上がり框と上の梁の位置が110mm差があり、階段の最上段を梁に合わせた形としています。
書棚内の奥行きが390mmとなります。棚板は基本固定ですが最もスペースが大きい下段中央二つの上は可動としています。
設計時の留意点
今回はセンターに背板(中仕切り)が入った正面と背面がシンメトリーの書棚となるため、背板両面が書籍類と接することになります。また、フレーム(框材)と側板、底板との段差は無い方が良いので面一が基本です。
階段と書棚の実用性の両立なので、細めのフレーム(框材)を補強するのは杉の背、底、側などの板部分となり、15mm厚で全てフレームの溝に収めています。高さのあるスペースの背板には幅広で厚みが杉板と同じ15mmの栗材の横桟を入れてさらに強度を持たせています。
30mm厚の踏み板の木口は端嵌めで全体のフレーム横桟と違和感のないようにし、踏み板前後は縦桟に収まる枘を施し構造材としてのパーツとしています。
杉は軟材であるために組み入れるところは木端や木口全体を保持するように深さ6mmの溝に収めます。可動棚板では両側を栗材で端嵌めし可動棚板を保持する側板の棚板金具設置部分はナラ板で補強しています。杉板のみでは間違いなく破損します。
制作
フレーム(框材)の組みは9mm厚の2.5枚枘を基本とし、上下の横桟へは三枚接ぎとなります。4隅の縦桟へは2方向から横桟と前後桟の小根付き2.5枚枘を挿すため木口の破損防止に枘穴を施した後に瞬間接着剤を染み込ませ強化しておきます(破損防止で良く使います)。
制作期間が長引くことが予想されるため、踏み板は最終組み立て時に反りが出ていてはマズいので一番最初に粗木取りしてシーズニングします。その段階で反りが大きいものは修正を施し(前回Blog「木工作業の工夫9(挽き割り後の反り修正)」)、最終組み立て前に踏み板の面と厚み出し、枘加工、仕上げを行う段取りです。
フレームの加工を終えてから、杉板の接ぎ、加工を行います。固定棚板の手前側には栗材も接ぎます。
部材の加工が全て終わった段階で部材ごとに柿渋を拭きます。
柿渋のこと
柿渋は拭漆での下塗り塗料として用いることもあることから、木工屋初期の頃は柿渋は下塗り塗料と思い込んでいましたが立派な塗料です。柿渋:1、水:1〜0.5で使用すると塗り易いのですが、今回試し塗りで乾きや塗りムラを確認して柿渋のみで拭いています。柿渋は水溶液なので材の仕上げ前の水拭き同様に材は毛羽立ちます。そのため毛羽立ちをサンディングして拭く作業を繰り返す必要があります。原液のまま使用したのは表面硬化を早めて毛羽立ちを抑えサンディング回数を少なくするためでもあります。
手摺りの上部は110度の中折れがあるため2枚の核で早めに仕上げ、前後のフレームを組み上げます。
次に背板を組み込んだ中仕切りに上下の前後桟を組み中仕切りに底板、棚板、天板、側板を挿し入れ、蹴板と踏み板をセッティングします。
前後のフレームとの枘位置を最終確認し、立てた状態でフレームを両側から枘の半分くらいまでコンコンと入れます。大型のプレスを持っていないため横倒しにしてしっかりと組み、本体を立ててクランプで締めて固定。
上下とも組み上げてから、踏み板と手摺りに再度柿渋を拭きます。効力はわずかかもしれませんが表面強化です。
以上です。
設計時に栗材のみでの板作りも考えたのですが、とんでもない量と重量になります。今回の栗、杉材の框組であっても上下段それぞれの運搬は二人掛かりです。まあ正解ということで。
おまけ
わたし自身の写真はほとんどありません。今回撮ってもらったので載せます。
My Friendヤモリ君の写真の方が良かったかも……