山桑と黒柿の仏壇制作

今年の春に入手した山桑と黒柿を使って仏壇を制作しました。どちらの材も製材されて10年以上自然乾燥されており安定している材です。
依頼当初、楢材で松煙を混ぜた拭漆仕上げ、とのご希望でしたが、わたしが山桑と黒柿を使いたい、と申し入れました。

 

概要

今回の仏壇は書棚に収納するタイプで、幅が約700mm、高さが約450、奥行きが270です。雨戸(扉)はサイドへの収納をご希望でした。レールや折り金具での収納をお考えでしたが、このサイズのものは無いこと、もしあっても破損や故障のメンテナンスが大変であること、などから、倹飩式の4枚扉で取り外してサイドに収納する方式を提案し採用することになりました。

材の基本的な厚みは桑が15mm、黒柿が18mmを半割して6mmのブックです。扉の厚みは12mmとしています。

仕上げは、桑材は濃色ですから松煙を混ぜない生漆による拭漆です。量産品などでは背板や棚板の裏側など見えない部分の仕上げ処理を行わないのが一般的なようですが、わたしはします。オイルフィニッシュならば最低1回、拭漆ならば4、5回。何故なら裏面の仕上げ処理を行わないと板材などは表裏の伸縮の差で反りが生じることを懸念するからです。

黒柿は独特の模様を殺さないように拭漆ではなく蜜蝋ワックスによる仕上げとなります。オイルフィニッシュ、浸透性が高い液状ワックスも試したのですが、オイル仕上げは濡れた風合いとなり白地部分が茶系色に、液状ワックスは艶が出ず拭漆の桑の艶とのバランスが悪い、からです。

本来ならば山桑と黒柿とも木地仕上げとし、磨き上げるのが最も美しいのでしょう。ただ黒柿は柿なので柿渋同様に熟れた柿の匂いがするのですが……

抽斗は、当初シンメトリーの2杯を提案したのですが、最終的にアンシンメトリーで1杯はA4封筒(角2、240×332)収納となりました。余裕のないスペースであるため抽斗の背板は3mm厚のスプルース、底板は5mm厚の木曽檜を使いスペースと強度を確保しました。
抽斗のつまみは紫檀の削り出し、雨戸左右の外側にも2mm厚の紫檀を貼っています。

この仏壇は、佛安佛檀店さんからの委託により制作したものです。

 

おまけ

柿渋が残っていた(というより柿渋染めをしたかったので余分に購入していたのですが)ので、勤め人時代のスプリングコート(綿製)を染めました。これで普段着使いで季節を選ばず気軽に着れる。

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