三方留めの練習

昨年知人宅を伺った際、中古で入手されたというキャビネット(ショーケース)に目が奪われました。
フレームは三方留め、剣留め、棚板は天秤指し、建具は通し枘留め、抽斗は包み蟻、鏡板は浮き彫り、等々。毛引き線が残っているそのキャビネットから凛とした職人が浮かび上がります。全体、局部と何枚も写真に収めました。今後の参考にしたいと思っている次第。添付する写真は三方留めの部分のみ。

そこでまだやっていなかった三方留めを練習しようと思っていた矢先、工房 悠さんがBlog工房通信 悠悠「車知栓(しゃちせん)による三方留」座卓での三方留めについて書かれました。非常に嬉しいタイミングです。
Blogでは、松本民芸家具での座卓制作技法を踏襲され、制作・加工は「ホゾ取り盤」「高速面取り盤」などを用いています。<ウチには無い!>ので、角鑿盤、横切り盤、傾斜盤というごく一般的な工作機械で制作することになります。今回はほとんどが機械加工です。
制作するのはスツールで、サイズはH:350mm、W:350、D:300と小振りです。フレームは30mm × 40角、脚は40 × 40角です。材は手元に残してあった撥ねたトネリコと端材のクリ板を使います。
制作にあたっては「木工の継手と仕口 増補版」(理工学社刊)を参考にしながら自分なりの工夫を加えます。フレームの留めは相欠き、フレームと脚部とは流れ留め欠きと枘を合わせます。流れ留めは厚みと幅の違いに生じる留め形のことで、人によってはアホ留め、バカ留めとも言うようです。

工房 悠さんは大物の座卓の制作であるため天板フレームの留めの締結には車知(しゃち)栓を使っています。確実に締結させる高度な技術であることは勿論ですが、周囲を平ベルトで締めるよりも確実に締結できます。大物座卓にはベルトは不向きでしょう。また、流れ留めの形欠き裏には相欠きの平枘があります。わたしの練習ではこの相欠きはやめました。理由としては、脚とフレーム外側の固定は確実になるものの内側が面接合となることで脚がが開くという外への力に不安があること、流れ留めの形欠きと枘で強度が保てるだろうこと、構造と加工が複雑になることです。このため今回はフレームの相欠き平枘2枚を貫通させる枘を使い固定することにしました。

以下、制作工程を書いていきます。写真を多用しています。その方が分かり良いかと思います。

 

1.フレームの留め

フレームの留めは相欠きとしています。センター合わせです。脚部との流れ留めの欠きが6mmの厚みで設定したことからその厚みを残して角鑿盤で掘ります。

横切り盤で材を留め設定治具に当て切削を行います。大物だと手鋸になるでしょうか。

フレーム留めの核溝用に使っている治具を使い、相欠きの枘を作ります。木口側の端の6mmをカットして整えます。

 

2.フレームの流れ留めの形欠き

フレームの留め加工と同様の切削です。横切り盤のテーブルに置いたシナ合板にチップソー切削ラインを作り、材の40mm位置と木口角を合わせて切削します。

 

3.脚部の加工

木口から30mm位置を毛引き、角鑿盤で流れ留め形の厚みを残して内側2方向から掘ります。2本の枘の間を6mmにしておくと効率的に加工を進めることが出来ます。
フレームの流れ留めの形欠きと同じ要領で、横切り盤で材の30mm位置と木口角を合わせて切削します。
余分なところを落とし枘長も設定値にします。枘長はセンターの相欠き2枚を貫通するため 9+6+6+α となります。

 

4.フレームの組み

通常のフレーム組み立てと同様にクリ板とフレームを組み上げます。締結には平ベルトを使います。

 

5.フレームと脚部との組み

組んだフレームの目違い払いをし、脚の枘穴を毛引いて掘ります。

平ベルトで接合する流れ留めを締めてプレスで押さえます。

 

6.完成

なんとか無事に仕上がりました。

今回の三方留めの練習は、小振りでしたから加工のほとんどを機械加工で済ませることが出来ました。実際は箱物であれば幅900mm、奥行き450mm、座卓では一間モノくらいになり手加工が多くなるでしょうし、車知栓も必要になってくるのかなぁと思います。その時は臨機応変に対応していきます。

 

追記(沖縄を思う)

12月中旬、母の49日で石川に帰った。霙の中、北陸自動車道を走っていると小松付近でゴォーと轟音が車をビリビリ震わせる。雷か?突風か?‥‥緊張するわたしの視界、窓の隅に低空飛行で旋回する戦闘機が映る。
これが沖縄の365日24時間なのか!と、怒りのような思いが突き上げて来る。

三方留めの練習」への4件のフィードバック

  1. すごい、一発で決まりましたか。
    意外と 案ずるより産むが易し、でしょ。 

    留めは接合強度をいかに確保するかがキモですが、この枘(はやしさんの呼称では「相欠きの枘」)は接合面も広いですし、また目違いを極小に留める効果も絶大。

    なお加工法ですが、枘取り盤を用いずとも(+例え2m近いフレームであっても)、傾斜盤に留めのジグ板を使い、切削もノコではなく、可能な限り幅のあるカッターを用いれば、容易にいくのでは?

    横切りですと、左右の片側しかできませんが、留めジグであれば、左右の加工が可能。

    また2mほどの長尺であれば、傾斜盤周囲に補助の定盤を仮設置するなどして。

    私の所有するカッターは Max 40mmしかありませんが、複数回に分けるなどすれば幅広のフレームにも対応可能ですね。

    ぜひ次回は車知栓(鯱栓)方式を試みてください。
    首尾よく運べば、ニンマリします。

    1. コメント、ありがとうございます。
      仰る通り、産むが易し!でした。
      留めのジグ板でのカッター処理、うむうむ、なるほど。ジグ板、いろいろ調べて作ってみます。他の加工でも応用できそうですね。

      車知栓、楽しい課題が増えました。感謝です!!

        1. 調べていただき、ありがとうございます。
          記憶にあるもので、ほっとしました。
          丸鋸に合わせてミニ傾斜盤テーブルも作ったことがありますから、作れそうです。
          丸鋸のミニ傾斜盤、持ち運びができるので重宝します。

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