細かい作業の木のかばん

9月末に「天秤」の組手を練習し、いざキャビネットへ!と思っていたのですがデザインがちっとも浮かんでこない。そこで工芸的に「木のかばん」を作ればレパートリーも増えるし広告等にもなるかなぁなどと。

木のかばん2

「木のかばん」が実用的かと言えば決して実用的ではありません。強度面ではアルミ、ジュラルミン、合成樹脂が優っているし、皮革、布系のように柔軟性を持っているわけでもない。また否が応でも木の厚みがかばんそのもののサイズアップになってしまう。使い手からすれば「木のかばん」を持っているという自己満足的なものかもしれない。まぁ取り掛かろう!

先ずは大きさから考える

A4収納のサイズだと、木の厚みのためガラの大きさに対して収納量が少なく感じる。
A3収納だと大きすぎて持ち歩く際に人にぶつけてしまったり破損する心配が出てくる。
で、B4収納サイズへ。
厚みも100mm以上となるとぶつける可能性は大きくなる。80mmでもコピー用紙1,000枚分(500枚梱包×2)が収納可能となり、スマートさが無くてちょっと受け入れ難い。
で、60mm。内寸が45mm程度であれば日常的に持ち歩くものは十分に収納できます。
(勿論、サイズのオーダーは受け付けています。)

外寸を決めたので、使用する材やパーツのデザイン、組手などを考えていきます。
本体フレームはマホガニー、鏡板はローズウッドとトチ、蓋の締まりとなるストッパーはローズウッド、ヒンジとハンドルの足は黒檀、ハンドルはトチの縮み杢としました。

「天秤」の組手

本体フレームの組手は当初から「天秤」と考え、手持ちの鑿で最小値。板厚は薄目を目指し10mmとしました。天秤の加工は蓋が薄いため本体と一枚の状態で行なっています。その方が加工しやすく精度が出ます。
以前作った留隠し蟻組みの小抽斗.2も板厚が10mmでしたから久し振りに細かい作業です。留隠しは組手が見えないので多少の隙間は見て見ぬ振りでしたが、今回はしっかり見えるというより見せるところでもあるので気が張ります。

ストッパー

開閉時のストッパーを考案しました。ローズウッドの薄板をバネとしています。留めとなるボタンと穴の位置は精度が必要です。ボタンと穴は丸すぎると外れてしまうし、角を残しすぎるとスムーズに稼働しない、板厚は厚すぎず薄すぎずetc .試作して程良いところを探し出しました。

ヒンジとハンドル

ヒンジとハンドルは蟻溝に指しています。
ヒンジは市販の金属製でも良かったのですが、板厚が10mmと薄くそれに対応できるビス類を探し出すのも億劫だったし、かばんの脚の機能も付加できる点から黒檀で作ることにしました。軸穴、蟻溝の位置は精度を要します。
また20mm角ほどの小さなヒンジはトリマーで面取りも行なっています。わたしは自作した小振りのテーブルを使っています。小物の面取り加工ではベースとガイドに合板を貼り使用するビットで穴開けを行いビットと合板との隙間を極力小さくして被切削材が落ち込んだりしないようにセットしておきます。(「木工作業の工夫3」を書かねば!)

ステイ代わりのストッパー

蓋を開けた際のストッパーはステイが一般的です。わたしは以前ステイに書類を当てて破った経験があるからかどうも気に入らない。そこでヒンジとヒンジの間にスライドするストッパーを考案しました。
ステイの場合はヒンジの軸に押す力、ステイの両端は引っ張る力が働きます。対して考案したスライド式のストッパーではヒンジの軸を引っ張る力、ストッパー上下に押す力が働きます。強度的にどちらが優れているかとなるとステイの方になるのでしょうか。構造も簡素で取り付けも容易です。次回はステイをデザインしようと思います。

色移りと汗滲みの対策

本体の仕上げはオイルフィニッシュと決めていました。ただ留意すべきことが2点あります。
ひとつはオイルを拭く際、黒檀とローズウッドの暗色がトチやマホガニーの明色部分にかかって汚れてしまうことです。このため暗色の黒檀とローズウッド、最も明るいトチは組む前に色移りしないようにオイル処理しておきます。

色、明色のオイルフィニッシュ

もうひとつはトチ杢のハンドルです。オイルのみだとどうしても手の汚れが滲みてきてしまいます。わたしは目止めシーラーを2度塗りしておきます。オイル処理のみより随分と汚れは滲みにくくなります。

終わりに

本体、パーツともに家具よりももっと精度が必要となる細かい作業でした。

もの作りは制作する度に課題や問題点が出て来ます。終わりがない、満点がないから作り続けるのでしょうね。

おまけ

ウォーキング中、サワガニが! 何か言っているような……
サワガニの一言、募集!! なんちゃって!

サワガニ


細かい作業の木のかばん」への2件のフィードバック

  1. おぉぉぉぉ〜、すごいわ。さっそく天秤差しが活きましたね。
    メカニカルで綺麗です。
    丸善ステーショナリ コーナーで取り扱ってもらいましょう。

  2. ありがとうございます(^_^;)
    今回は機械加工での天秤です。手加工の練習は機械加工に生きてきますね。やはり基本は手です。でも良い機械が欲しい(-_-;)

    丸善S.C.ですか‥‥ちょっと考えようかなぁ‥‥(~_~;)

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