タグ別アーカイブ: センターガイド

工数が多いキャビネット

斜め上方から見たキャビネット

楢の変六角形のキャビネット。左右を45度ずつカットしたデザインです。
全体の面取りを凹のR形状としました。一般的な凸のR形状は触感が柔らかくなるのですが、緊張感のある全体のデザインに締まりが出ないために凹とした次第。
変六角形の3枚のフレームを五角形の脚部(後ろは角)で支えるデザインは、加工精度は勿論ですが工数も多くなり組み立ても色々工夫が必要となります。
以下、要所ごとに見ていきます。

天板

天板はフレーム型天板としています。ブックマッチの接ぎによる15mm厚です。接ぎ合わせた単板では中段、下段のフレームとのイメージバランスが取れないこともあります。天板の上に鏡を置くことも意識しています。

天板

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抽斗とセンターガイド

収納で最も重要視され多用されている抽斗(引き出し)ですが、その基本構成は前板、側板、向こう板、底板からなるものの、用途に応じて様々な構造があります。

抽斗の構造はさまざま

個々の木工屋で基準となっている構造は、親方、先輩からの指導や技能専門校などでの先生の指導に依るところが大きいと思います。
前板と側板の取り付け方法、側板と向こう板の取り付け方法、底板の取り付け方法等様々でどの方法が一番良いとは言い切れないでしょう。材料コスト、制作時間、強度、意匠等から個々の木工屋がそれぞれ最善のタイプとして選択していると思います。
わたしは、側の縦桟(もしくは中仕切り、束(つか))と上下の棚口桟に前板がすっぽり収まるインセットを基本タイプとしていて、前板と側板とは包み打ち付け接ぎ(側板の厚み分、前板を欠き取る方法)、側板と向こう板とは小根追い入れ組み接ぎ、構成部材は底板も無垢材で、前板、側板、向こう板の内側下方に溝を回し底板を差し込んでいます。これを基本として、アウトセットにしたり、前板と側板との接ぎを手の込んだものにしたりしています。今後もこの基本タイプは変わらないと思います。

人って情けないもので楽な方法(加工など)を知ってしまうと、どうしてもそこに流れてしまう。例えば、寸法、カネが出ているはず、と基準面を無視してしまうとか、底板は合板でタッカーで留めるとか、甘い誘いはたくさんあります。それを打ち払い背筋を伸ばすのが注文家具を制作する姿勢だとわたしは思っています。ただ、その線引きは難しいですが‥‥

抽斗の受けとガイド

一般的に抽斗の受けとガイドは抽斗の側板が乗る受け桟と摺り桟に依ります。わたしも当然これを基本としています。

ただ、木工屋になってまだ浅い頃に図面を引いていた時、側を帆立を指した框組とした際、抽斗の左右の揺れを抑える摺り桟のスペースが無い!ことに気付きました。また、この構造だと抽斗を入れる際に側板の奥が帆立に当たってしまう。図面を引き直し、側の横桟の位置を上に上げて対処しました。それ以降は、正面である見付けの棚口桟の位置とのバランスを図るため側横桟の幅(厚み)を大きくしてセンター合わせを行ったりするなどしています。抽斗受け桟や摺り桟を後付けすることもありますが、一体として棚口桟と束、棚口桟と縦桟、ふたつの桟に枘組みした方が強度は増します。お客様が見ることなどほとんど無いでしょうが見た目も綺麗です。

また、抽斗を入れる際に側板の奥が帆立に当たってしまう、もうひとつの対処の方法はセンターガイドです。

センターガイド

わたしがセンターガイドを初めて知ったのは、アメリカ大使館で使っていたという中古の整理箪笥です。知人から抽斗にガタがあるので見てもらいたい、と言われたのです。大雑把な作りでした。プレス品にローラー式のセンターガイドはまあ良しとしても、左右に抽斗側板の受け桟が無い!他にも不具合がたくさんあり結局手を出しませんでした。不具合の多さがセンターガイドを意識の外に放り出してしまった!そんな感じです。

その後、すっかりセンターガイドは忘れていたのですが、工房通信 悠悠「引き出しセンターガイド」(2009年6月24日)で思い出しました。

抽斗センターガイド

当初わたしは、「引き出し底の下に取り付ける受桟(センターラン)」、センターガイドのガイドとしてセンターガイドを挟む桟を2本取り付けていたのですが、何竿か作っていて抽斗の嵌め合いを確認している時に、向こう板の底にセンターガイド用の欠き取りがあり、ガイドに接触しているのはこの部分のみ。抽斗左右側板の嵌め合いが良ければセンターガイドを挟む桟は不要でその部分のみ硬い材であれば良い。と結論付けました。ただ、間口の大きな場合には「受桟(センターラン)」が必要になる場合もあるでしょうが、底板600×600mm位までは問題無く使ってもらっています。

写真では向こう板の背にガイドとなる材を取り付けていますが、向こう板下部15〜20mmを山桜にする場合もあります。