工数が多いキャビネット

斜め上方から見たキャビネット

楢の変六角形のキャビネット。左右を45度ずつカットしたデザインです。
全体の面取りを凹のR形状としました。一般的な凸のR形状は触感が柔らかくなるのですが、緊張感のある全体のデザインに締まりが出ないために凹とした次第。
変六角形の3枚のフレームを五角形の脚部(後ろは角)で支えるデザインは、加工精度は勿論ですが工数も多くなり組み立ても色々工夫が必要となります。
以下、要所ごとに見ていきます。

天板

天板はフレーム型天板としています。ブックマッチの接ぎによる15mm厚です。接ぎ合わせた単板では中段、下段のフレームとのイメージバランスが取れないこともあります。天板の上に鏡を置くことも意識しています。

天板

抽斗

上段の抽斗は天板をフレーム型としたことから天板下が空間となり、抽斗側板上部が擦ることがなく傷みが生じるためサイドガイドとしました。サイドガイドは深部まで伸ばす必要はありません。引き出した際に抽斗が落ちない長さがあれば十分です。

サイドの斜めの抽斗はスペースが小さいため外側の側板の高さは控えめにして収納品の取り出しを容易にしました。このため前板との取り付けは外側を蟻としています。

中段の抽斗はセンターガイドと側板上部に擦り桟を設け3点で安定させる方法としています。抽斗を外すとフラットになり、側部分の空きスペースに手が伸ばせる工夫です。接ぎ合わせた単板としたのもそのことを意識したもので下のスペースとの境界ともなります。
単板の固定は後ろと側の脚部の欠き取り、前の脚部は保持部材の取り付け、中央仕切りの棚板保持フレームとなります。このため組み立て時は6本の脚部、棚板保持フレーム、単板を一挙に行わねばならず苦労しました。単板の伸縮と反りの対処は脚部の欠き取り、位置決めは前の脚部と前のみ固定した棚板フレームとなります。

棚板

棚板は左右2枚。四角ではなく変形ですが両端は端嵌めを施しています。奥よりも扉解放部が小さいため中央の棚板保持の仕切りは板ではなくフレームとしてスペースを広くしています。

扉のデザインも全体のイメージと統一しています。鏡板は左右でブックマッチの2枚接ぎです。
Pヒンジ使用はイメージ当初から考えていました。
ところが、扉は中下段のフレームから奥に入っているためPヒンジ取り付けビスが揉めない。このため上下に10mm厚の桟を設けることになるのですが、その桟にも面取りを行いデザインを統一。本体の取り付けでは、扉側のPヒンジはビス止めし上下の桟と本体側はビス穴を前もって施し、扉と桟を固定して本体に取り付ける作業となりました。綺麗に収まり胸を撫で下ろしました。
扉の締まりは、ネオジウム磁石を本体と扉両方に埋め込んでいます。

つまみと把手

つまみと把手は本紫檀の削り出しで3種類作りました。メインとなる上部抽斗と扉の本紫檀のつまみと把手ものは本体デザインと統一。内部の抽斗用は奥行きが20mm以下となることや抽斗が薄めであることもあり下側に指がかかる程度の欠き取りを行った台形。上部斜め抽斗は前方に引き出す意図を加えた丸型の欠き取りを施し縦位置とした半丸形状に凹のR欠き取りとしました。

手の込んだ作業でしたが、面倒な作業をこなせば他の仕事は気持ちを楽にして取り組めることになるでしょう。

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