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ちょっと変わった端嵌め

一枚板の扉で映えのある端嵌めですが、加工には精度が必要なため神経を使います。切削加工も寸分違わぬ表裏同一形状、また、使う工具もルーターやトリマ、切削治具‥‥。
そこで今回容易に加工できる形状を考えました。
表裏の形状は異なり、ルーターやトリマ、切削治具も使わない方法です。

扉の全体1

 

今回の扉は小振りの仏壇用で、左右それぞれ2枚の折戸です。扉を開けた際2枚の扉の裏側が重なります。また1枚の扉の幅が80mmと85mmと小振りです。今までやってきた神経を使う端嵌め加工だと小振りなこともありより加工が面倒となるため、考案しました。
表は端嵌め部分が板より3mm厚く留め形状、裏は板と面一で長方形です。
嵌め合い部分ですが、板は両端が端嵌めへの通し枘、中央の大きい欠き取りは端嵌め幅より3mm小さく、通し枘内側は留めラインに掛からない枘としています。板の表側は板面のままで切削なし、裏側は嵌め合いの厚みを残してカットしています。
端嵌め形状は、表側が板の欠き取りに被さる留め形状、裏側はそのままです。

加工は非常にシンプルです。
板に留め加工が無いため、欠き取りは傾斜盤のみで特別な治具を用いることもありません。
端嵌めの加工では、板と嵌め合うところは溝切りカッターで切削し、両端は角鑿盤で溝に沿わせて枘穴加工、表の留め部分は傾斜盤や横切り盤で切削、となります。
以上です。

端嵌め側面

今回考案した「ちょっと変わった端嵌め」は、表側に端嵌め部分が盛り上がった形状です。板は黒柿、端嵌めは山桑で色合いが大きく違うため、表裏とも面一の通常の端嵌めであっても「端嵌めが成されていることは明瞭」、ならば端嵌めを盛り上がらせても違和感がない、という判断です。ですから逆に同一材の場合は見栄えがあまり良くないかもしれません。
通常の端嵌めは、板幅が300mmくらいを超えると経年変化による材の伸縮による留め部分の剥がれ、板割れが懸念されます。今回の端嵌めも同じことが言えます。端嵌め構造の宿命かと思いますので、それを承知の上で設計する必要があります。

仏壇のメンテナンス

2009年に制作した仏壇(厨子4)のメンテナンスを行いました。

14年経つと経年変化が良く判ります。構造的な不具合はありませんでしたが、楢の拭漆仕上げの本体は全体が明るくなり、栃の杢板の鏡板も拭漆仕上げですが制作当初は明るく本体とのコントラストが魅力でしたが、ヤケが入り本体と同じくらいの風合いになっていました。楢はもともとヤケが入りにくい材です。仕上げの漆が明るくなったのです。ところが栃は漆が明るくなる以上にヤケが入ったことになります。少し驚きでもあります。

2009年制作時

2023年メンテナンス後

 

 

メンテナンス

今回のメンテナンスは

  • ピューター合金で制作した把手、つまみの磨き
  • 蝶番の磨き
  • 本体の拭漆(内部は行わない)

です。

把手、つまみ、蝶番の磨きはピカールケアを使います。金具周囲の木理にピカールケアが入り込まないようにしっかりテーピングし、使い古しの歯ブラシと指先で錆と汚れを落としていきます。

本体の拭漆ですが、仏壇の内側、扉の鏡板の表側は行いません。仏壇内側はヤケが小さかったことによります。扉の鏡板は出来れば制作当初のコントラストに近付けたいと思ったからです。鏡板に漆を塗れば、また全体的に暗っぽくなってしまう。また、扉枠と鏡板の隙間に漆が入り込み、今後の経年変化で鏡板が収縮した際に除去できなかった漆が線状に出てきてしまうことを懸念したこともあります。このため鏡板のテーピングは隙間が出来ないようにしっかり行い、そして漆が鏡板に付かないように養生もします。テーピングして拭漆

金具もテーピングします。特にピューター合金で作った把手は凸凹していて漆が入り込み易く除去しにくいのでテーピングします。抽斗の前板はつまみは外して側板にテーピングします。
今回の拭漆は一回のみです。漆を塗る前に洗剤を薄めた水でクリーニングした際、汚れらしい汚れが無かったからです。また傷も見当たりませんでした。

磨き、拭漆とも予定通りに終えることが出来ました。制作当初のようにはなりませんが、経年変化とはこういうものだ、と納得するしかありませんね。

 

おまけ 1

アツイナツ、ナツイアツ‥‥も後2週間くらいでおさまるでしょうか??そんな猛暑の中、今年も庭にはヤマユリが綺麗でした。近所のおばさんは「鳥が上手に種を運んでくれたんやねぇ」と。チャウチャウ!!毎年球根を残しておいたり種をしっかり撒いとるからやねん!!

 

おまけ 2

おが屑を引き取ってくれている農家のおじさんからたくさんの小鮎をいただいた。
15cmくらいの大きいものは塩焼き、小振りのものは甘露煮。美味かった!!!

小鮎

山桑と黒柿の仏壇制作

今年の春に入手した山桑と黒柿を使って仏壇を制作しました。どちらの材も製材されて10年以上自然乾燥されており安定している材です。
依頼当初、楢材で松煙を混ぜた拭漆仕上げ、とのご希望でしたが、わたしが山桑と黒柿を使いたい、と申し入れました。

 

概要

今回の仏壇は書棚に収納するタイプで、幅が約700mm、高さが約450、奥行きが270です。雨戸(扉)はサイドへの収納をご希望でした。レールや折り金具での収納をお考えでしたが、このサイズのものは無いこと、もしあっても破損や故障のメンテナンスが大変であること、などから、倹飩式の4枚扉で取り外してサイドに収納する方式を提案し採用することになりました。

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