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仏壇のメンテナンス

2009年に制作した仏壇(厨子4)のメンテナンスを行いました。

14年経つと経年変化が良く判ります。構造的な不具合はありませんでしたが、楢の拭漆仕上げの本体は全体が明るくなり、栃の杢板の鏡板も拭漆仕上げですが制作当初は明るく本体とのコントラストが魅力でしたが、ヤケが入り本体と同じくらいの風合いになっていました。楢はもともとヤケが入りにくい材です。仕上げの漆が明るくなったのです。ところが栃は漆が明るくなる以上にヤケが入ったことになります。少し驚きでもあります。

2009年制作時

2023年メンテナンス後

 

 

メンテナンス

今回のメンテナンスは

  • ピューター合金で制作した把手、つまみの磨き
  • 蝶番の磨き
  • 本体の拭漆(内部は行わない)

です。

把手、つまみ、蝶番の磨きはピカールケアを使います。金具周囲の木理にピカールケアが入り込まないようにしっかりテーピングし、使い古しの歯ブラシと指先で錆と汚れを落としていきます。

本体の拭漆ですが、仏壇の内側、扉の鏡板の表側は行いません。仏壇内側はヤケが小さかったことによります。扉の鏡板は出来れば制作当初のコントラストに近付けたいと思ったからです。鏡板に漆を塗れば、また全体的に暗っぽくなってしまう。また、扉枠と鏡板の隙間に漆が入り込み、今後の経年変化で鏡板が収縮した際に除去できなかった漆が線状に出てきてしまうことを懸念したこともあります。このため鏡板のテーピングは隙間が出来ないようにしっかり行い、そして漆が鏡板に付かないように養生もします。テーピングして拭漆

金具もテーピングします。特にピューター合金で作った把手は凸凹していて漆が入り込み易く除去しにくいのでテーピングします。抽斗の前板はつまみは外して側板にテーピングします。
今回の拭漆は一回のみです。漆を塗る前に洗剤を薄めた水でクリーニングした際、汚れらしい汚れが無かったからです。また傷も見当たりませんでした。

磨き、拭漆とも予定通りに終えることが出来ました。制作当初のようにはなりませんが、経年変化とはこういうものだ、と納得するしかありませんね。

 

おまけ 1

アツイナツ、ナツイアツ‥‥も後2週間くらいでおさまるでしょうか??そんな猛暑の中、今年も庭にはヤマユリが綺麗でした。近所のおばさんは「鳥が上手に種を運んでくれたんやねぇ」と。チャウチャウ!!毎年球根を残しておいたり種をしっかり撒いとるからやねん!!

 

おまけ 2

おが屑を引き取ってくれている農家のおじさんからたくさんの小鮎をいただいた。
15cmくらいの大きいものは塩焼き、小振りのものは甘露煮。美味かった!!!

小鮎

鉄瓶の漆メンテナンス

今年の梅雨入りは昨年より3週間ほど早いとか。毎日90%の湿度と雨が続き、まともに木工作業が出来ない。
てな訳で、長年愛用している鉄瓶の漆メンテナンス。銘は「南部秀山」。

漆メンテナンス

10年程前に1度漆でメンテナンスして以降、何もせずに毎日使っていた南部鉄瓶。
今回は、漆メンテナンスの手順を。
わたしなりのメンテナンスなので、南部鉄瓶さん側から「ちがうぞ〜」と言われるかも。

漆塗りの準備

 

1.たわしで水洗い
たわしは金属たわしでなく通常のたわしを使い、凹凸の隙間のホコリを落とす感じ。
食器洗剤で表面の油汚れを流します。油が残っていると漆が固化しない。(焼くから問題ないかも)
鉄瓶の中は軽く水で濯ぐ程度。ゴシゴシ洗わない。

洗った鉄瓶

 

2.空焚き
蓋に熱が伝わりにくいため本体と蓋は、別々に焼きます。

鉄瓶の空焚き

 

3.漆塗り
20分ほど焼きます。目安は口付近に漆を塗ってジューと煙が出るくらい。
使う刷毛は樹脂製ではなく獣毛製のもの。樹脂製は溶けます。
毛は15mm程度に短くカットしておくと塗りやすいです。
ジュージューと煙を出しながら塗ります。
部屋の換気を忘れずに!煙がスゴイです!

鉄瓶に漆塗り

 

4.焼き上げ
塗った漆の煙が出なくなるまで焼きます。
煙が出なくなるまで焼くと漆が焼き上がり手に付着しません。
ただし、把手は本体のようにチンチンに焼けることはないので、漆が焼き上がることはありません。拭漆同様にウエスで拭き上げ固化するまで放置(1〜2日)する必要があります。

塗り終えた鉄瓶

以上です。

山桑と黒柿の仏壇制作

今年の春に入手した山桑と黒柿を使って仏壇を制作しました。どちらの材も製材されて10年以上自然乾燥されており安定している材です。
依頼当初、楢材で松煙を混ぜた拭漆仕上げ、とのご希望でしたが、わたしが山桑と黒柿を使いたい、と申し入れました。

 

概要

今回の仏壇は書棚に収納するタイプで、幅が約700mm、高さが約450、奥行きが270です。雨戸(扉)はサイドへの収納をご希望でした。レールや折り金具での収納をお考えでしたが、このサイズのものは無いこと、もしあっても破損や故障のメンテナンスが大変であること、などから、倹飩式の4枚扉で取り外してサイドに収納する方式を提案し採用することになりました。

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木工作業の工夫8(パーツごとのオイルフィニッシュ)

オイルフィニッシュは、組み立て後に行う、と大垣技能専門校時代に教わりました。抽斗も組み立て後に前板部分にテーピングして行っていました。
木工屋になった当初、教わった方法でやっていたのですが、テーピングしていても側板や底板ににオイルが滲み、率直に「綺麗じゃない」気に入らないのです。テーピングに時間が掛かり、塗る時にも気を遣う。そこでしばらくすると抽斗の前板は組む前にオイルフィニッシュするようになりました。前板と側板との組みが手の込んだ蟻組などではなくシンプルであれば、テーピングしたものより圧倒的に綺麗です。

抽斗前板のオイルフィニッシュ

また、木工屋になって直ぐに拭漆仕上げの厨子の制作依頼があり、拭漆の場合は組む前に部材ごとに仕上げることを学びました。10回程度繰り返し塗り拭き取りを繰り返す拭漆では組み箇所に漆が溜まる、塗り拭き取りが綺麗に行えないなどが理由です。
そこで最近では、オイルフィニッシュでも最終組み立てを行う前、パーツごとに行うことが多くなりました。勿論、組んで目違い払いをする箇所はそれを済ませてからですが、基本的に部材ごとに済ませてしまいます。拭漆の経験があることから違和感はありません。また、拭漆の回数と比べれば4分の1ですから苦にはなりません。

 

パーツごとのオイルフィニッシュ

パーツごとのオイルフィニッシュのメリットを挙げてみると

  • 塗り、拭き取りが容易
  • 塗り、拭き取りのムラが出ない
  • 細部まで出来る(組み立て後だと奥まで塗れない)
  • 箱物で外、内とも仕上げられた丁寧さが出る
  • etc.

パーツごとのオイルフィニッシュ

接着剤を塗布する箇所はテーピングしておけば良いし、テーピングを忘れていれば接着面を残して周りをテーピングして軽めにサンディングすれば良い。また、オイルの効能で溢れた接着剤も材への浸透は少なく、拭き取りも容易で綺麗です。
材に染み込んだ接着剤でオイルが浸透せず拭き取りミス!といったこともなくなります。これも拭漆の経験によるものです。

また、木のかばんで書いたように、黒檀や紫檀などの暗色が強い材と明色の材とを組むパーツは個別にオイルフィニッシュすべきです。暗色材の研磨粉が明色材の木目に入り汚れとなり除去できません。暗色材は組む前に必ず表面処理しましょう。

拭漆作業にはオイルフィニッシュ作業に活かせる手法がいくつもあります。
拭漆を未経験の方も拭漆の世界へ一度! なんちゃって!

ギタースタンド2

こんなギタースタンドがあっても良いじゃないか!と、大胆なデザインを欅材で制作、拭漆で仕上げました。

 

ギタースタンド1

45年前を思い出しての手指の訓練(?)と、魅せられたEstas Tonneの楽曲の1小節でも弾けるようになれればと思い、今年2月にクラシックギターを購入しました。フォークギターの金属弦の音も好きなのですが、年齢的なものも影響してかクラシックギターの柔らかな音も欲しかったのです。
以前作ったギタースタンドはフォークギター用であったため、クラシックギターを掛けることができません。ネックの幅が違うからですね。そこで、今回は汎用性を持たせたスタンドをデザイン、制作しました。 続きを読む ギタースタンド2