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斜め四方胴付き枘でアタマの中が……

いつもは材のサイズからデザインや設計を展開していくのですが、今回は自由度を高め初期段階のデザインを重視してみました。

今回は斜め四方胴付き枘の加工を少し。

角鑿盤での斜め加工

経験豊富な木工屋さんは治具作りも上手ですね。以下は、治具に馴染みの薄い方に。

材のサイズからの展開では治具をあまり使うことはなく、使っても従来から使用している治具で対処できるのですが、自由度を高めると新たに治具を制作しなければなりません。
電動工具も高度な加工が出来るようになってきており、その精度も素晴らしいものがあり治具を必要としないで加工できる場面もたくさんあるようです。わたしはそれを全く否定しません。あればあったで重宝すると思っています。単に購入資金が無いだけ……

ただ、治具を制作する作業は家具設計同様にそれなりにアタマを使います。家具設計では材の伸縮や反り、強度確保などを考えるのと同じように、治具制作では既存の機械性能と墨付けした材とのマッチングとを考えます。例えば角鑿盤では鑿は垂直、テーブルは平行に動くわけで、斜めに彫るためにはテーブルを傾けるか材を傾けなければなりません。鑿は垂直に材を彫るのでその力点を考えて材がズレないように固定する治具が必要となるわけです。また治具があれば同じ加工が繰り返し出来ます。

シンプルな角鑿盤の治具

今回、角鑿盤での枘穴加工は角の二方に違う角度で彫ります。 続きを読む 斜め四方胴付き枘でアタマの中が……

木工作業の工夫6(長短の枘加工)

木工作業の工夫1〜5

木工作業の工夫も6回目となりましたが、過去の記事内容をタイトルに明記していなかったので今回から()表示することにしました。ちなみに1〜5は下記の内容です。

  1. しらがきでの白チョーク/立ち鉋での木口処理/木作り時での鉛筆マーキング/挽き割り時の反り予想
  2. 傾斜盤による曲面の斜め加工/バンドソーでの笠木加工
  3. 手押し鉋盤の安全カバー/傾斜盤での材の押さえ
  4. 組子の制作(トリマーでの切削)
  5. 薄板の計測

その他、抽斗センターガイド、材の押さえと送り、端嵌めなどは直接タイトルにしています。

 

長短の枘加工

馬乗り枘の建具

框組では縦桟、上下桟の長さはそれぞれ基本的に同じとなります。また上下桟の間に入る中桟の長さも見え代は上下桟と同じになりますが、枘の長さは上下桟より短くなることもあります。
木工を始めた当初、枘長を含めた横桟の長さは上下桟と中桟を同じにしたり、中桟を短めの枘として木取り加工していました。中桟を短く木取ってしまうと見え代が上下桟と僅かに違ってしまったことがありました。
今は中桟の枘を短くする場合は、枘加工を終えてからカットするようにしています。「そんなことは常識!」と言われそうですが、わたしにとっては工夫の一つなので長短の枘穴加工、枘加工を書くことにします。 続きを読む 木工作業の工夫6(長短の枘加工)

変則的な枘

五角形の脚部の枘。フレームと組むために変則的な枘となります。
外観全体のデザインが重視されるのは当然なのですが、それに準じた組み構造も必要と考えます。加工作業は一手間、二手間多く掛かるのですが、木工屋ですから嬉々として取り組みます。

への字型の枘加工ですが、内側は傾斜盤で数ミリの深さで毛引く程度に入れます。チップソーの刃厚2.2mmで奥まで切ると枘強度が落ちることを懸念するからです。チップソーの毛引き痕をなぞって薄刃の手鋸を入れます。薄刃厚0.5mmの切削は強度を下げることもないでしょう。
への字は15mm長、30mm厚のフレームに上下から入るために15mmとなったわけです。もう一方は20mm長、フレームの内側に入りへの字とフレームを挟み込みます。への字は加工後5mm落とすのでチップソーの痕は消えます。

変則的な枘

下の写真、手前は地板。奥は裏返した天板。天板の構造はフレーム型天板。

フレーム

ほぞ(枘)のこと<追記2>

「底糊」について

「底糊」について、接着剤メーカーの株式会社オーシカさん、木工の先輩にお話を伺ったり、また自身も接着剤に関する資料に再度目を通しました。
「底糊」の効果について、具体的な立証結果というものを見つけることは出来ませんでした。それは使用材、枘の構造(長さ、幅、厚、胴付き面)、接合度、家具の使用条件等、多くの条件からその強度を立証することが難しいからだと想像します。

幾つかの点で頷けることがありました。
  • ごく浅い枘穴しか掘ることが出来ない場合に、枘先と底を密着する精度の高い加工を行い接着強度確保を狙う。
  • ダボ、ビスケットの表面は圧縮溝が付けられていて、接着剤の水分による膨張による接着面の加圧効果の期待と、穴底の接着剤が圧縮溝から押し出され接着剤が行き渡り接着効果が向上する。
  • ミニフィンガージョイントでは、接合部内隅の隙間を埋める加工処理が曲げ強さと美観のためにも推奨される。

<底糊:接着剤で満たすのが良い>という言い回しはあまり的確ではなかったようです。
通常の枘での過分な接着剤は胴付き面の接着を疎外することもありますし、枘穴の空隙を満たす適量の塗布も現実的には難しいです。接合部分には接着剤の未塗布部分を作らない、過分に塗布しない、空隙は小さい方が良い。ということになると思います。

今回、読者の方からのご質問で、改めて接着剤を勉強する機会を得ることが出来ました。充分な回答になっているとは思っていません。「底糊」についてはアタマに焼き付いています。引き続きヒアリングも行い、文献などにも目を通そうと思っています。新たな発見がありましたらまた記述したいと思っていますし、「底糊」についてご存知の方からのコメントもいただければ幸いです。

ほぞ(枘)のこと<追記>

☆”底糊”について、読者の方から、枘穴へ接着剤を満たすこと、接着剤の種類による接着力の効果などのご質問がありました。今一度わたし自身も理解を深めるために調べて、後日ご報告させていただきます。

書き方が少し”底糊”を強調し過ぎていましたでしょうか?

枘の側面のみの接着剤塗布よりも、枘先と枘穴の底面にも接着剤を入れることで接着効果が高まる、ということです。このことは「“底糊”を効かせる」と言うようですね。

木の仕事の会「接着剤セミナー」(2009年2月17日 講師:株式会社オーシカ 名古屋営業所 松崎 力 様)で配布していただいたテキストに改めて目を通してみますと、接着のメカニズムとして、(以下、リスト表示部分はテキストより抜粋・要約)

  • 木材表面の細かな孔に接着剤が侵入、固化して材同士をくさび状につなぎ止める「投錨効果」(アンカー効果)とする説『機械的接着』
  • 木材分子と接着剤分子間の化学的な結合、もしくは電気的な引き合いによりつなぎ止めるとする説『化学的接着』
  • 接着剤と木材の親和性(馴染む性質)<濡れ>、双方の分子間引力とする説『物理的接着』

があり、これら三つが組み合わさって接着が出来る。とされています。
枘先と枘穴の底面には否応なく空間が出来てしまいます。ただ空間としてあるよりも接着剤で満たしていた方が接着効果が高まる、と解釈しています。

接着剤には多くの種類(酢酸ビニル系、エポキシ系、フェノール系、ゴム系など。乾燥速度。1液・2液タイプ。etc.)があり、どれを選択するかは非常に重要ですが非常に難しいですね。使われた先輩方からアドバイスを受け使ってみる、と言うのがわたしにとっては現実的です。
接着剤がそれぞれ持っている性能を最大限に生かして、上手く使いこなすには、(以下、リスト表示部分はテキストより抜粋・要約)

  • 材料の特性
  • 接着剤を使用する際の環境
  • 接着後に想定される必要強度、設置環境

等をチェックすべきなのでしょうが、これら全てを考慮して接着剤を選択、使用することは個人の木工屋では難しいですね。
ですので、わたしが接着効果を高めるために出来ることは、(以下、リスト表示部分はテキストより抜粋・要約、一部追加)

  • 使用状況に適合した接着剤の選択
  • 使用する材表面についた異物の除去
  • 組み部分の形状変化(二枚枘、2.5枚枘等)
  • 接着面積の増加(底糊、二枚枘、2.5枚枘等)
  • 接着剤乾燥までプレス、クランプなどでの充分な圧締

などです。

接着剤、奥が深いですね。