冬場の拭き漆はツラい!ちっとも乾いてくれない!工場2階の一部屋を漆部屋(室)として使っているが、気温はストーブで上げられるものの湿度がなかなか上がらない(目指せ!80%)!朝起きてカーテンを開けると周囲の山々に靄が掛かっている!「しめたっ!」と思ったら、<PM2.5>だった!おまけに乾燥注意報まで出て湿度は20%を切っている。毎日洗濯物を漆部屋に吊るしていたが乾くのは洗濯物ばかり‥‥泣けて来る!その涙が蒸気となったお陰か、借りて来た加湿器のお陰か、どうにか納品にまで漕ぎ着けた。
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粗木取りと組み試行
寒い時は、何故かコリコリ
冬、この季節は寒い工房でコリコリしたくなる。
小学校時代、「冬の図工の授業が版画」だったことがわたしの脳裏に焼き付いているようだ。
小学5年生の図工の授業で版板を彫っていた時、丸彫りと線彫りが入り乱れている不調和が気に入らず、細丸彫り一本で彫り直した。また、彫る方向も同一にした。輪郭は細丸で丸ギザだけれど刷り上がりは柔らかく落ち着いていた。 今も丸鑿、彫刻刀を持つと、そうなってしまう(進歩してない!?)。今回の薔薇は違うけれど。
6年生の冬は、同級生と向かい合ってその同級生の顔を版画にするというもの。それは細丸彫りで始めたがグラデーション部分が皺、汚れのように見えて気に入らず、家に持ち帰り版板の裏に夜遅くまでかけて彫り直す。重ね刷りの版のように白黒をクッキリさせた(手法名称はあるのだろうけれど知らない)。
・ローズウッドに、薔薇を彫る
(外径:260) <28, Jan. 2011>
・いろいろとコリコリ
<Dec. 2010> ※左:飾り台(朴、山桜、山桜) 中・右:欅の削り出し小箱(拭き漆)
漆の美と時間
木工の制作工程で、徹夜すれば何とかなるものと自身ではどうにもならない工程があります。仕上げの拭き漆(透き漆)です。
器物や固体でない場合、例えば箱物ですと部材ごとに漆で仕上げて組み上げて行くため、框組(かまちぐみ)の鏡板等は組み上げる1週間以上前に漆で仕上げるなど、全ての部材の木取りや加工など効率良く仕事を進める段取りを決めておく必要があります。
工程はさておき、わたしはこの拭き漆が仕上げの中で一番美しいと思っています。
最低6回は塗り重ねて行くのですが、夏を迎える今の季節ですと日に2回、冬場ですと室に入れていても2日に1回ということもあります。
速く乾く漆も市場に出ているようですが、わたしは従来からの漆を使います。
漆が乾いていく時間はわたしの手から離れた時間・漆任せという工程です。
拭き漆は塗り重ねる毎にその表情は美しさを増して行きます。
様々な加工工程の中で「漆任せ」を迎える時、「あくせくしても仕方がないのだから」と自身に言い聞かせます。それは美を迎える前の静かな時間であり、大切にしたい時間です。(もしかすると、「恋愛」に似ているのかもしれない。)
※漆は乾くと言うより、大気中の水分と反応して固形。気温20°、湿度80%が最適。