カテゴリー別アーカイブ: 木工

たまには自分用に

コーヒーのペーパーフィルタ・ケースを作った。たまには自分用も良いだろう。もちろん端材で本体は楢、蓋は黒柿。ミニ蝶番は市販の真鍮製。仕上げはオイルフィニッシュ。
あんまり手を加えると自分で使わず売り物にしちゃおう、などと思ってしまうので手を加えるのはほどほどにした。
当初は単純な板組みで、と思っていたが天秤指しにすることにした。天秤の二等辺三角形の大きさは高さ10mm、上≒1mm、下≒6mm、傾斜角75°で手持ちの手鋸と鑿の最小サイズ。毛引き線はシラガキで表裏しっかり引いてみた。売り物の時は0,3mmのシャープペンシルで引き、加工後毛引き線を消すのだけれど、シラガキで引いた時の鑿の当たり具合や完成後に毛引き線が残った雰囲気も感じたかった。
表裏から掘る鑿の刃先の当たり具合や精度は、当て木を使うにしろシャープペンシルより格段に良い(当然ですが)。毛引き線が残った雰囲気は、なんとなく職人らしい(わたしも職人の端っこにいるのですが‥‥)作り。それもまた楽し。

 

おまけ

今シーズン、今日2月9日の寒波は4回目。年末の1回目の重たいドカ雪で庭木がバキバキ折れた。3回目の後、折れた庭木を整理して太いものは薪にした。枝葉は春になったら始末する。
covid-19(新型コロナ)も第4波は来るだろう。イヤだが‥‥

1回目の寒波

1回目の寒波

 

4回目の寒波(手前は1回目の寒波で折れた枝葉)

 

三方留めの練習

昨年知人宅を伺った際、中古で入手されたというキャビネット(ショーケース)に目が奪われました。
フレームは三方留め、剣留め、棚板は天秤指し、建具は通し枘留め、抽斗は包み蟻、鏡板は浮き彫り、等々。毛引き線が残っているそのキャビネットから凛とした職人が浮かび上がります。全体、局部と何枚も写真に収めました。今後の参考にしたいと思っている次第。添付する写真は三方留めの部分のみ。

そこでまだやっていなかった三方留めを練習しようと思っていた矢先、工房 悠さんがBlog工房通信 悠悠「車知栓(しゃちせん)による三方留」座卓での三方留めについて書かれました。非常に嬉しいタイミングです。
Blogでは、松本民芸家具での座卓制作技法を踏襲され、制作・加工は「ホゾ取り盤」「高速面取り盤」などを用いています。<ウチには無い!>ので、角鑿盤、横切り盤、傾斜盤というごく一般的な工作機械で制作することになります。今回はほとんどが機械加工です。
制作するのはスツールで、サイズはH:350mm、W:350、D:300と小振りです。フレームは30mm × 40角、脚は40 × 40角です。材は手元に残してあった撥ねたトネリコと端材のクリ板を使います。
制作にあたっては「木工の継手と仕口 増補版」(理工学社刊)を参考にしながら自分なりの工夫を加えます。フレームの留めは相欠き、フレームと脚部とは流れ留め欠きと枘を合わせます。流れ留めは厚みと幅の違いに生じる留め形のことで、人によってはアホ留め、バカ留めとも言うようです。

工房 悠さんは大物の座卓の制作であるため天板フレームの留めの締結には車知(しゃち)栓を使っています。確実に締結させる高度な技術であることは勿論ですが、周囲を平ベルトで締めるよりも確実に締結できます。大物座卓にはベルトは不向きでしょう。また、流れ留めの形欠き裏には相欠きの平枘があります。わたしの練習ではこの相欠きはやめました。理由としては、脚とフレーム外側の固定は確実になるものの内側が面接合となることで脚がが開くという外への力に不安があること、流れ留めの形欠きと枘で強度が保てるだろうこと、構造と加工が複雑になることです。このため今回はフレームの相欠き平枘2枚を貫通させる枘を使い固定することにしました。

以下、制作工程を書いていきます。写真を多用しています。その方が分かり良いかと思います。

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仕事納めは、蕎麦打ち台

年末に間に合わせて欲しい!と言われていた蕎麦打ち台が今年の仕事納めです。
こね鉢は所有されているので、蕎麦打ち台、延し棒、駒板です。
業務用ではないため蕎麦打ち台は組み立て式で、収納スペースからのサイズ指定となり幅900mm、奥行1000、高さ700の天板縦使いです。

蕎麦打ち台、延し棒、駒板

 

蕎麦打ち台

天板は木曽檜で一枚板を半割し2枚接ぎとしています。製材時41mm厚は手鉋仕上げで37mmとなりました。水分を含む麺生地を打つためサンディングはしません。サンディングですと間違いなく毛羽立ちを起こし生地の水分を吸収して麺そのものがバサつき滑らかに生地を動かすことが出来なくなります。また口に入れるものを打つわけですから表面塗装は行わず木地仕上げです。台が麺の水分を吸い過ぎないためにも丁寧な手鉋作業が必要です。真っ平らな面出しはもちろん鉋枕もほとんど判らない状態にします。
天板に施す蟻桟は欅で3本入れます。両端の蟻桟は54mm×68、中央が54×48で1ヶ月以上前に粗木取りしてシーズニングを済ませています。蟻桟が反っては話になりません。

また見た目が美しい寄せ蟻ではなく木端から20mmまでの通しです。寄せ蟻は端一方が効かなくなるからで道具としての麺打ち台ですから美観以上に機能重視です。
天板の接ぎ合わせ箇所へ接ぎ切れを防ぐため木口側に契りを入れることも考えたのですが、蟻桟に接ぎの近くそれぞれ2箇所丸棒を差すことで天板の接ぎ切れ防止とともに蟻桟の基点にもなるようにしています。
天板の木口には漆を染み込ませています。木地仕上げですから外気の影響を直接受けます。最も影響を受け易い木口に漆を染み込ませて木口割れを防止します。天然素材の漆は浸透性が高く接着能力もあり非常に効果があります。白い檜に黒‥‥機能美として捉えてください。

脚部は米ヒバを使っています。麺打ちは前後方向に力が加わるため組み立て式の左右それぞれは固定とし、貫2本で組み上げる形としました。貫は左右それぞれ蟻組みの落とし込みとなります。組み立て式なので脚部の左右揺れがわずかにありそれが気になって貫にジョイントボルトをセッティングしています。写真はありません。
天板の蟻桟と脚部とは相欠きで位置決めとなります。
台は脚部を含め全てサンディングを行わない手鉋による木地仕上げ、としています。

延し棒

旋盤を所有していないため、丸棒は外注制作です。希望径より2mm太めの角材での発注となります。蟻桟同様に1ヶ月以上前に粗木取りしてシーズニングを済ませています。
材は山桜です。木地のものと拭漆仕上げのものそれぞれ2本ずつ。使い易い方を使ってもらえれば、との思いです。

駒板

手元に1枚残していた15年ほど前に制作した駒板を添えます。蕎麦職人から評価されたもので数年後追加注文も受けました。
包丁を下ろす際の駒板当たり面の木目、麺生地を滑る当たり面の木目に十分配慮したものです。材は山桜とカツラ。仕上げはもちろん木地仕上げです。

きっと、Covid-19(新型コロナウイルス)感染拡大がおさまることを願いながら蕎麦を打ち、振る舞われる側も同じことを願いながら食すことでしょう。

山桑と黒柿の仏壇制作

今年の春に入手した山桑と黒柿を使って仏壇を制作しました。どちらの材も製材されて10年以上自然乾燥されており安定している材です。
依頼当初、楢材で松煙を混ぜた拭漆仕上げ、とのご希望でしたが、わたしが山桑と黒柿を使いたい、と申し入れました。

 

概要

今回の仏壇は書棚に収納するタイプで、幅が約700mm、高さが約450、奥行きが270です。雨戸(扉)はサイドへの収納をご希望でした。レールや折り金具での収納をお考えでしたが、このサイズのものは無いこと、もしあっても破損や故障のメンテナンスが大変であること、などから、倹飩式の4枚扉で取り外してサイドに収納する方式を提案し採用することになりました。

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古民家への階段書棚

設置した階段書棚3

 

古民家への階段書棚の制作です。
階段横側を正面とすると、センターに背板(中仕切り)が入った正面と背面がシンメトリーの書棚となります。
踏み板とフレーム(框材)などは栗。背、底、側などの板部分は杉を使用し、仕上げは柿渋となります。経年変化で古民家に馴染んでいくことを意識しました。

 

概要

傾斜角は41度で緩やかに設定しています。踏板の段差は一番下が200mm、他は全て210mm。踏み板部分のスペースは幅780mm、奥行き260mmと一般的な階段よりも僅かですがゆとりがあります。このゆとりにより上下分割の下段には手摺りを省くことが出来ました。本来ならば最下段まで手摺りがあった方が良いのでしょうが、最下部まであることでの圧迫感(広い部屋が狭くなる)、コスト等を検討してこのデザインとなりました。
手摺りの高さは、上の梁がある廊下手摺りの下に収まるように710mm、踏み板中央付近では850mmくらいとなります。
段数は9段で奇数段の下は背板(中仕切り)を入れず明かり取り、飾りスペースとしています。

また設置場所ですが下の上がり框と上の梁の位置が110mm差があり、階段の最上段を梁に合わせた形としています。
書棚内の奥行きが390mmとなります。棚板は基本固定ですが最もスペースが大きい下段中央二つの上は可動としています。 続きを読む 古民家への階段書棚