TV下の薄型キャビネット

 

着色後のキャビネット左から

壁掛けTVの下に設置するキャビネットです。液晶TVが世に出て来て早や40年くらい経つでしょうか。軽薄短小の時代が到来して「厚さ」という言い方が「薄さ」に変わりました。TVが液晶で薄型になったもののキャビネットの上に置く慣習はまだ残っていますが、壁掛けが主流になってきているようにも感じます。わたしなんぞはTVをほとんど見ないため、小型の液晶TVを小さなテーブルに置いて移動できるようにしています( タブレットのようにコードが無ければ良いのに‥‥)。そのため壁掛けTVの実感は乏しいです。また、壁掛けといっても位置が固定されるわけでTVを見る人の場所がほぼ決まってしまう。それもあまり好きではないです。

 

本体デザイン

さて、今回の壁掛けTVの下に設置するキャビネットですが、TVが薄型であることは勿論ですが、キャビネットの左右に出入りする扉があるため奥行きは210mm(天板)とこちらも薄型です。幅は1,400mm、高さは650mmと人の動線に合わせたサイズとしています。

抽斗、扉のサイズやレイアウトは、左右の扉と抽斗は初回デザインのままで、中央の抽斗は、当初の希望は横3杯、縦5杯の合計15杯という江戸時代(?)の薬棚風でしたが、20cm高のボトル類の収納が出来るように、とのことで8案出して、上段が深さ85mm、中段が200mm、下段が220mmの9杯の抽斗となりました。抽斗の奥行きが本体背板を除くと190mmと小さいこともあり、中下段の抽斗は機能的、構造的に見て前板下部を軸とした前倒しも提案したのですが抽斗タイプが選択されました。ただ抽斗の側板の高さは収納物の出し入れがしやすいように115mmとしています。
扉と抽斗の把手部分は、薄いキャビネットなので把手金具は取付けず欠き取りとしています。また全体の前見ごろが面一だと余りにも味気ないので、扉と抽斗に3mmのR面取りを施してその部分を前に出す設計としました。

抽斗

全体の材は赤みが強いセンダンを使っています。本体の側板と扉の鏡板はクリの杢板を使いました。杢板を使うことは考えていなかったのですが、材置き場で出番を待っていた小振りで薄い杢板を思い出し使うことにしました。ただ希望の赤黒い着色で杢が‥‥。着色する前に写真で木地色でいくか、着色するかを再確認すべきだったかなぁ、と後悔。赤黒い着色でも杢のさざなみが感じられるから、ま、良いか!と。

実際の設置

 

構造

前後のフレームを支える桟は抽斗の摺り桟でもあり、左右に板で囲う函もあるため24本4種類の桟が必要となりました。そしてその桟は抽斗の縦横の相欠きフレームを囲む構造としています。

着色は弁柄と墨汁を混ぜています。センダンはナラよりハジキがなく浸透も良好で木地本体も赤色であることから思いに近い色が出ました。

 

おまけ

今冬は寒波のせいで全国で雪害があり、当地でも積雪が60cmくらいでした。温暖化の影響で雪が重く家の雨樋が落ちました。近所では屋根が壊れたりビニールハウスが潰れたところもあります。

木工作業も雪掻きで時間が取られてなかなか思うようには進みません。作業場の温度も3°に届かないのはざらで、接着には今回も部材を電気毛布でくるんでいました。冬場は材の反りなどが小さく切削後の修正もほとんどないのはありがたいですね。

2026.03の蕗の薹

作業場に閉じこもっていたため、完成した時には蕗の薹がもう開いていました。毎年恒例の蕗味噌は断念。山椒の若葉の佃煮、実の佃煮は何とか作りたいと思っているのですが、さてさて‥‥

英国の農家風?キャビネットの制作

「英国の農家で使っているようなキャビネットを作って欲しい」
内心「なんじゃそれ??」。英国へは行ったことないし、ましてや英国の農家の暮らしや家具の特徴もさっぱり分からない。とりあえずネットで英国家具らしきものを見てみることに。
あまり良いものを見なかったせいか、どれもこれも装飾加工が多く、黒を基調とした濃厚な色合い。柾目、板目、木目はあまり気にしていない木取り‥‥。わたしなりにイメージし丁寧に作業をしなければ。

 

英国風キャビネット1

構造など

サイズは幅:1200mm、高さ:900、奥行き:450と良く使われる大きさ。 主材は岩手県産の楢。10年以上前に丸太買いして45mmと70mm厚の柾目で製材、自宅の材置き場で自然乾燥させていたものです。今では国産材の入手は困難になって来ていて貴重な材となりました。

天板や扉の鏡板は楢特有の虎斑杢を選択したのですが、赤黒く着色して欲しいという要望で「嗚呼、杢が‥‥」。

 

天板

天板は虎斑杢の3枚接ぎで35mm厚、面取りは上部がぎんなん面でその下を斜めに切削しています。蟻桟は後ろから差しています。蟻桟は納まりの後部を天板裏面に合わせてカットしそこに丸棒を差して位置決めしています。その固定位置で天板が伸縮することになります。
天板は後乗せで側上部の横桟とボルトと鬼目で固定する方法です。

脚部の側は框組で中央に縦桟を入れています。側の框組は前後の横桟も入るため枘は長短2枚の2.5枚枘で上段は小根付きです。ちなみに中仕切りと上下の横桟、前後桟の組みは三枚先組みの枘です。鏡板は杢は無いもののブックです。

キャビネット 側図面

 

構成 

構成はは両側が開き戸、中央が4杯の抽斗となります。
両側の開き戸の扉は厚み分前に出しています。4角を留加工として中に縦桟を一本面落ちで入れています。縦桟は扉の中央ではなく全体のセンターよりに位置決めしています。扉の中央にすると全体を見た時にロンパリ風に見えるからです、留加工ですが、25mm角9mm厚の材を雇い核として使っています。Dominoなどを使う方法もあるのでしょうが持っていないので。
鏡板は虎斑杢の1枚の板から4枚取りシンメトリになるようブックとしています。
棚板は左右それぞれ2枚としました。
中央の抽斗部分は奥に入る形になります。
最上段の前板は飾り無し。下3段はぎんなん面に加工した枠を貼っています(この作業は好きではありません)。側板の高さは4杯とも140mmと共通にして側板上部へ擦り桟を本体に取り付けています。
扉と抽斗の把手はずいぶん悩みました。アンティークなものを探すのですが1個2,800円のものは流石に手が出ない。農家の暮らしのイメージが湧くものをと選択しました。賛否はあるものと覚悟しています。
わたしが出来る英国の農家風の装飾はと言えば、天板上部、扉枠の面取りをぎんなん面に、抽斗下3杯の前板にぎんなん面に加工した枠を貼ることくらいです。

英国風キャビネット2

着色

また着色についてですが、赤黒い着色ではリボス社のカルデットや和信化学のポアーステイン、弁柄と墨汁などいろいろ試してみました。塗って乾かし2度塗り、薄めてみたり濃くしてみたり、赤を塗って黒を塗ったり、混ぜてみたり、拭き取りのタイミングをずらしてみたり‥‥最終的に弁柄と墨汁を混ぜて2度塗りすることにしました。ところが混ぜて塗ってしばらくすると弁柄が沈み墨汁が浮いて来ます。分離したのでしょうか?弁柄を擂鉢で粒子をもっと細かくしなければならないのでしょうか?それを拭き取ると弁柄の赤が強く残る‥‥そこで2度目は早めに拭き取ることにしました。これで今回の着色の決着としました。これ以上の色決め作業はわたしには出来ません。

そうそう、使っているタイトボンドⅢは8°以下では使えません。8°以下では乾いた時に小麦粉が乾いたようになり接着しません。今まではストーブの前で材とボンドを温めていたのですが、今回から材とボンドを電気毛布で1時間くらいくるむようにしました。効果は大です。

山桑と黒柿の仏壇制作2025

山桑と黒柿の仏壇1

本体を山桑、雨戸(扉)は黒柿を使用した小振りの仏壇です。サイズは、幅320mm、奥行235mm、高さ370mm。

本体の構造は、天板と地板の蟻溝に側板を、また棚板2枚とスライド板は背側から差し込む方法をとっています。スライド板は110mm引き出すことができます。
雨戸は左右それぞれ2枚の折戸です。側板と外側雨戸の閉じ角度は114°、内側と外側の閉じ角度は152°としています。雨戸の幅は外側が85mm、内側が80mmです。雨戸は2023年12月のBlogで紹介した「ちょっと変わった端嵌め」を採用しています。

雨戸の収まりは、ネオジウム磁石を内側雨戸上部と天板内側のストッパーに取り付けによります。キレイに収めるためストッパーの磁石2個の位置を雨戸の磁石より数ミリ小さくしています。これによって雨戸が内側に寄る力が働きます。
雨戸、抽斗のつまみは紫檀の削り出しです。

 

おまけ

酷暑が続いていて、作業中に汗が仕上げた部材に落ちないか、オイルフィニッシュ中にニトリルゴム手袋の中に溜まった汗が落ちないか、と夏の作業は夏の苦労があります。
酷暑でも今年も庭にヤマユリが開きました。夕暮れ時には白い花が浮かび上がり、その白さが涼しさを感じさせてくれます。また来夏も!

フリーデスクの制作

フリーデスク 天板角度と高さを調整できるキャスター付きのフリーデスク(可動机)の制作です。フリーデスクという名称はわたしが勝手に付けたものです。

天板のサイズは、幅:620mm、奥行き:400mm、厚さ:20mmで、天板角度は5°、35°に設定、天板軸上の高さは600〜900mmに自由設定出来ます。脚部はキャスター3点支持としています。材はストックしている岩手産のナラを使っています。国産のナラも希少な材となりました。

構造

このフリーデスクの基本的な構造は譜面台の展開で、支柱や角度調整、ノブの構造はほぼ同様です。
天板は2枚接ぎで左右に端嵌めを、手前と奥にストッパーとなる筆返し(?)を施しています。

支柱はアウター上部に高さ固定のノブが付きます。ダイレクトにインナーを締めるとインナーが傷付くため内側にアルミ板を置き、インナーをほぼ面で固定する構造です。アウターとインナーの隙間を0コンマ数mmに仕上げることで、エアサスペンションのように緩やかに上げ下げ出来ます。

天板は角度調整が行えます。当初は天板裏の軸受けとインナーをノブ(ボルト、鬼目ナット)で締めるのみの方法でしたが、天板の重量、使用時に手を置くなどで角度が変わってしまいます。対策として、材に食い込むだろうとPP板やシリコン板、ワッシャーに放射状のギザギザを入れて裏側に材に食い込む加工を施したものを試してみたのですが、逆に滑りが良くなってしまう結果となり、これらの方法は断念しました。

加工したワッシャー

模索を続け、最終的に最も良く使うであろう5°と35°の位置にピン固定することしました。角度固定位置をもっと増やそうかとも思ったのですが、ピン穴が増えて煩雑になりピン穴の破損も懸念されるため二つに絞ったわけです。
天板の角度調整は、支柱のインナーと天板側に支柱のインナーを挟む2枚の軸受けからなります。

脚部は馬乗りで組んだT字の3点支持としています。H型の4点支持も考えたのですが、キャスター で移動できる方式をとるため、平滑な床面であっても場所によっては4点のうち1点が浮いてしまうことがあります。3点支持では確実に床面に落ち着きます。
また、3点支持とすることで支柱位置が微妙です。手前過ぎるとワーキング中に左右に触れやすく、奥過ぎると奥に倒れやすくなります。
脚部と支柱は通し枘で楔をを挿して固定しています。
キャスターは小径38mm∅ホイール、ホイールは合成ゴム製、3個ともストッパー付きです。小径ホイールとしたのは回転するキャスター の支点位置の変化が小さいこと、ホイールを樹脂製ではなく合成ゴム製を選択したのは、床面で滑りにくく床を傷付けにくいということからです。

ノブの構造

ノブは本体同様にナラの削り出しとしています。15mm角の材にボルトのヘッドを収めてノブ本体に組み込みます。形状、構造も譜面台で使ったものと同様です。

 

おまけ

5月16日、豊田市美術館で開催されていた『黒田辰秋 木と漆と螺鈿の旅』(3月15日〜5月18日)へ行ってきました。彼の作品を観覧するのは数年振りです。今回の展示数は確か200点くらいであったかと思います。これだけの作品を目にすることが出来たことは嬉しい限りです。

作品の豪快さに圧倒されながら、素朴に、これほどの材はもう入手出来ない時代になっているんだなぁ、と‥‥

2024年、何気ない日常

ウクライナ、GAZAに心が痛んでいる最中、能登地震から始まった2024年、そして9月の能登豪雨。石川を離れて47年になるわたしではあるけれど、さらに心が折れてBlogに向かう気持ちが湧いてこなかった。何気ない風景写真を撮っていると、そんな何気ない日常が奪われた人たちのことを考えてしまっている。

何気ない日常が1日も早く取り戻せることを願うばかり。

2024年のいくつかの何気ない日常の風景を貼ります。

1月
積雪は30cm。地球温暖化の影響だろう。10年前の10分の1くらいだ。

01.24雪
01.24雪

3月
家から一つ目の信号で止まっていると、窓からコウノトリを確認。幸あれ!

03.05コウノトリ
03.05コウノトリ

6月
庭に何か‥‥近づいてみるとイシガメ。どこから来てどこへ行く?

ウォーキング中、鳩たちの散歩に出会う。

06.11鳩の散歩
06.11鳩の散歩

8月
数年前に池があったところにヤマユリが数本。今は球根を残しておいたり種をバラまいたりして200本を超えるヤマユリ群生場所になった。満足!

庭の数カ所に曼珠沙華。赤と白。

12月
毎年恒例。年末には敦賀港の魚問屋へ獲れたてのハマチを調達。今年はブリが豊漁とのことで安い!が、ドデカイブリを1尾食べることは不可能。トロは少ないけれど50cmクラスのハマチで充分。3枚におろして身は刺身(10人前くらい)にして冷凍。頭、カマなどは粗煮にする。捨てるのは骨、エラ、ひれ、内臓くらい。