書見台

「ショケンダイ、作ってください。」
「ショケンダイ?? ゴメンなさい。ショケンダイって何ですか?」
「本を読む時に本を立て掛ける台ですよ。書を見る台と書きますよ。」
「あぁ、ブックスタンドですか。」
小学生の頃、教科書を立てていたスチール製のアレだ。
「そうです。あなたに作ってもらいたいんです。」
「あっ、はい。了解しました。図面引いて送ります。」
「図面は良いんですよ。任せますから。」
「いえ、それなりに意思の疎通を図っておきたいので。」

図面を送って数日後
「図面、どうでした?」
「大きさ、デザインは任せます。
材はマホガニーって書いてありますけど、どんな材ですか?」
「上質な家具材で上品な赤色してます。軽くて狂いがほとんど出ないステキな材です。わたしが持っているのはアフリカ産だと思います。」
「そう。板面のところは全部そのマホガニー?」
「そのつもりです。杢がある材をと思ったんですが、杢の材を使うと書見台そのものは綺麗ですけど、本を読むのに本の周りがチカチカして邪魔になると思うので、品があるシンプルなものにしました。」
「そうね。でも少し変化が欲しいわね。」
「んん‥‥、じゃあ周囲をマホガニーにして中にローズウッドを嵌め込みましょう。」
「ローズウッドって?」
「んん‥‥、黒檀、紫檀とか良く耳にしたり目にしたりすることあると思うんですけど、その紫檀を想像してください。ローズウッドも最高級材で深く濃い赤い褐色といった色合いで黒檀ほどではないですが硬い材です。加工してると薔薇を思わせるとても甘い香りがするんですよ。仕上がると香りはしませんが‥‥。マホガニーとの色合わせはステキです。」
「わかりました。それで進めてください。」

手加工を主とした肘掛け椅子

大垣技能専門校時代にデザインした椅子を作っておきたいなぁと数年に一度思うのでした。大きな材が必要になること、構造的に見直す箇所が多くあることなどからなかなか踏み出せませんでした。2年前にあまり質が良いとは言えない栃の厚材を入手していたこともあり取り掛かることにしました。

トチ肘掛け椅子全体

Shadeでの3D画像の作成

大垣技専時代、同級生(わたしよりずいぶん若い!)から「Shade」というソフトで作成した画像を見せられました。いやいや驚きました!自宅PCで3D画像の作成が出来る!しかも大垣技専に通っているためソフト購入も学生割引となる!確か3〜4割引で3万5,000円程度だったと記憶しています。即買いです。
MacでIllustrator、Photoshopを長く使っていたので大きな抵抗もなく入ることが出来ました。3D原案

Shade Personal R5の特徴

  • 画像を360度見ることができる
  • 光源の数、角度、光量の設定ができる
  • 抽斗を入力しておけば、出し入れできる
  • 材の選択が可能(木は数種類)
  • etc.

ただ不便な点もありました。
数値入力での画像作成になるので、各部材ごとに詳細情報入力が必要になるために非常に時間を要する。にも拘らず入力した数値が画像上に表すことが出来ない。ということが残念でした。(バージョンアップで解決されたと聞きます)ですから、画像として見たり見せたりするには良いツールですが、制作側の立場からは余り実用的ではありませんでした。また、家具職人さんから画像依頼があって作成して渡したところ、「画像が正確でリアルすぎると、納品した際に現物とのギャップが出てしまう。モノクロで背景なしにして欲しい」とのこと。少しばかりショックを受けながらも、なるほど、と思ったこともありました。
結局、わたしは2、3年使ったもののバージョンアップすることなく使わなくなりました。 続きを読む 手加工を主とした肘掛け椅子

葛城ユキの訃報

2021年4月、葛城ユキがステージ4の癌であることをニュースで知る。
なんてこったい!
そして今月27日、腹膜癌で死去。
逝ってしまった。

わたしが葛城ユキを知ったのは「哀しみのオーシャン」からだったと思う。
カセットテープの録音日から、1981年から日常的に聴いていた。当時、レコードが擦り減るのがイヤでレコードを買うと直ぐにカセットテープに録音していた。

訃報を知り、段ボール箱からLPを引っ張り出してみた。4枚のLPと1枚のEP。「哀しみのオーシャン」が入っているLP「寡黙」が無い。友人から借りてカセットテープに録音したのだろうか?1993年頃まで聴いていた。

手元にあるのは、

  • 「寡黙」(テープ)
  • 「SHOUT」(テープ)
  • 「POWER」(LP)
  • 「L.A.Spirits」(LP)
  • 「RUNNER」(LP)
  • 「motherly」(LP)
  • 「True Romance」(テープ)

あなたからずいぶんPowerをもらった。
ありがとう。

クリのリビングテーブル

リビングテーブルの制作依頼です。
当初、「材はクリ。サイズはw : 1,000mm × D : 500 × H : 450。デザインは任せます。6月中に欲しい。」とのこと。デザインは任せますと言われてもそれなりに納得してもらいたいものです。で、5度傾斜の留め隠し蟻組みや天秤差しなどのデザインを4点提案したものの「板作りは好きではない。トチのサイドテーブルのデザインが気に入っている」。お任せデザインでも具体的なイメージ提案は必要ですね。
トチのサイドテーブルの天板と脚の組みは三方留め風。天板には脚の4分の1サイズの枘と斜面接着、懸念される天板内側への倒れ込みは横桟が入るために強度は確保されます。留め隠し蟻組みや天秤差しは精度が必要なのは当然ですが、組んでしまえば強度は全く問題ありません。
ところが今回はデザイン上横桟(幕板)は入れたくない。対角線に桟を通そうとすると蟻桟の高さで視界に入ってしまう‥‥。最終的に隅木を枘組することにしました。

 

斜視

 

神経ピリピリの制作

図面ではどんな形状も描くことが出来ますが、制作する段になると加工順を頭に置き、ひとつひとつの部材に加工精度が求められます。天板への脚と隅木の枘穴加工も手作業です。もっともピリピリするのは40mm厚の天板と45mm角の脚の傾斜面切削です。傾斜角は51.5度。天板と脚ともに傾斜盤で切削したい。天板の切削は可能だろうか?? 続きを読む クリのリビングテーブル

木工作業の工夫12(内Rの切削)

椅子の笠木などではR加工を施します。
一般的な加工方法は、①反り台鉋での切削、②バンドソー等で粗木取りして反り台鉋、③型板を当てがいルーター加工、などでしょうか。
100mm程度までの幅であればこれらの方法で加工できます。が、もっと幅広であったり、材を斜めにして幅広にするなど機械加工が困難な設定をした場合は手加工が主となります。
初っぱなから手鉋でも良いのですが切削量は多く時間と労力が負担となります。
そこで外Rと内Rを線引きし、切削部分に鋸で細かく切れ目を入れてそれを落とせば手鉋の作業は大幅に短縮できます。

笠木に鋸引き

(下手くそな鋸引き)

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