木工作業の工夫8(パーツごとのオイルフィニッシュ)

オイルフィニッシュは、組み立て後に行う、と大垣技能専門校時代に教わりました。抽斗も組み立て後に前板部分にテーピングして行っていました。
木工屋になった当初、教わった方法でやっていたのですが、テーピングしていても側板や底板ににオイルが滲み、率直に「綺麗じゃない」気に入らないのです。テーピングに時間が掛かり、塗る時にも気を遣う。そこでしばらくすると抽斗の前板は組む前にオイルフィニッシュするようになりました。前板と側板との組みが手の込んだ蟻組などではなくシンプルであれば、テーピングしたものより圧倒的に綺麗です。

抽斗前板のオイルフィニッシュ

また、木工屋になって直ぐに拭漆仕上げの厨子の制作依頼があり、拭漆の場合は組む前に部材ごとに仕上げることを学びました。10回程度繰り返し塗り拭き取りを繰り返す拭漆では組み箇所に漆が溜まる、塗り拭き取りが綺麗に行えないなどが理由です。
そこで最近では、オイルフィニッシュでも最終組み立てを行う前、パーツごとに行うことが多くなりました。勿論、組んで目違い払いをする箇所はそれを済ませてからですが、基本的に部材ごとに済ませてしまいます。拭漆の経験があることから違和感はありません。また、拭漆の回数と比べれば4分の1ですから苦にはなりません。

 

パーツごとのオイルフィニッシュ

パーツごとのオイルフィニッシュのメリットを挙げてみると

  • 塗り、拭き取りが容易
  • 塗り、拭き取りのムラが出ない
  • 細部まで出来る(組み立て後だと奥まで塗れない)
  • 箱物で外、内とも仕上げられた丁寧さが出る
  • etc.

パーツごとのオイルフィニッシュ

接着剤を塗布する箇所はテーピングしておけば良いし、テーピングを忘れていれば接着面を残して周りをテーピングして軽めにサンディングすれば良い。また、オイルの効能で溢れた接着剤も材への浸透は少なく、拭き取りも容易で綺麗です。
材に染み込んだ接着剤でオイルが浸透せず拭き取りミス!といったこともなくなります。これも拭漆の経験によるものです。

また、木のかばんで書いたように、黒檀や紫檀などの暗色が強い材と明色の材とを組むパーツは個別にオイルフィニッシュすべきです。暗色材の研磨粉が明色材の木目に入り汚れとなり除去できません。暗色材は組む前に必ず表面処理しましょう。

拭漆作業にはオイルフィニッシュ作業に活かせる手法がいくつもあります。
拭漆を未経験の方も拭漆の世界へ一度! なんちゃって!

木工作業の工夫7(蝶番用の型板)

蝶番の取り付けは、本体と扉側の両方をそれぞれ欠き取り取り付ける方法と、扉側に蝶番を畳んだ2枚分厚さを欠き取る方法があります。
2枚分欠き取る方は建築での建具に良く見かけます。勿論家具でも使われていますし、どちらかを否定する気は毛頭ありません。作業性、取り付け精度、見た目など作り手の好みと思います。建築分野では建具は建具屋さんで収まる枠は大工さんという分業がなされていること、枠への欠き取りは非合理的であり非効率的であるからなのでしょう。
わたしは木工屋になった当初から、本体と扉側の両方をそれぞれ欠き取り取り付ける方法です。扉に2枚分欠き取ると本体側に蝶番の厚みが出てしまうのがどうも気に入らないのです。
欠き取りの方法は、蝶番に合わせた型板を作りテンプレートガイドを取り付けたトリマーで行うのが一般的と思います。当初は6mm厚のシナ合板に上下2個分を墨付けして糸鋸で穴開けしヤスリで仕上げていました。それなりに蝶番は収まるのですが微妙に満足できません。問題点は型板とテンプレートガイドにあります。
今回は、その型板の制作とテンプレートガイドについて。

蝶番用型板1

型板の制作

トリマーのテンプレートガイドの外径は、マキタ、京セラ(旧RYOBI)とも10mmです。(海外メーカー品を所有していないため、あしからず!)刃径6mmのビットでは2mm差なので、開いた蝶番のサイズが32mm×50mmだと、型板には36mm×54mmを開けることになります。
糸鋸で開けてヤスリで仕上げていた頃は、型板制作に時間が掛かる割りに直線が出ない、精度が出ないなど‥‥。
型板に効率良く、精度が高い穴を開ける方法を2つ。 続きを読む 木工作業の工夫7(蝶番用の型板)

ミニ枘、ミニ蟻桟

設計段階で抽斗とスライド板との間に6mm厚の横桟を設定しました。もっと厚みのあるものにすれば角鑿を使う通常の加工で良かったのですが、それではデザイン的にちょっと‥‥
というわけで、3mm厚の枘とスライド板裏の2mm高の蟻桟を。

3mm厚の枘

 

ミニ枘

6mm厚の桟組みで組み部分の加工をどうしようか、2mmもしくは3mmのチップソーで流してしまおうかとも思ったのですが、手元に3mmのストレートビットもあることだし二方胴付きに。
加工は長年愛用している自作の小さなトリマーテーブルで。深さは10mmなので3回に分けて深く加工していきます。

 

ミニ蟻桟

スライド板の厚さは7mm確保出来たのですが、出し入れ口は12mmとしたので両端には12mm厚の端嵌めを施し、中央付近の落ち込みと反りを抑えるために蟻桟を入れます。それほど大きな効果は期待していませんがあった方が良い。蟻溝の深さは2mm。建具の薄板の反り止めにも使います。

 

おまけ

今年も百舌が巣を作り、4月11日に3羽の雛が巣立っていった。
毎朝パソコンやりながら窓越しから親鳥が餌を運んでくるのを微笑みながら見ていた。今年は巣の高さが2m付近で様子伺いもなかなか出来なかった。巣作りに気付いて3年目、1年目はヒヨドリと思っていたが2年目に百舌と確認、来年も来て欲しいものだ。

4月12日の「Covid-19(新型コロナウィルス)」削除しました

4月12日の「Covid-19(新型コロナウィルス)」について、

デマを拡散するのはやめましょう。今のような感染拡大期に、根拠・ソースなど確認もせずにそうした偽情報を流すのはそれ自体犯罪です。 「日赤医療センター」などで検索すればすぐわかります。

とのご連絡をいただきました。
「日赤医療センター」のサイトで確認したところ、
新型コロナのチェーンメールでした。

確認せずに掲載したことを読者の方にお詫びするとともに
今後十分注意していきます。
申し訳ありませんでした。

4月12日の記事は削除しました。

椅子は手加工が多い

”機械は手の延長線上にある”と思っています。
機械加工は手加工より効率良く、キレイに加工する手段でもあります。機械加工を否定する気は全くありません。良い機械を上手く使えればそれに越したことはないと思います。ただ欲しいと思う機械を導入(購入)する余裕はなかなか出て来ません。既存の機械にいろいろと補機や治具を作り取り付けて意図する仕上げを試みるのですが、「こりゃあ手だな」ってことは良くあります。
また、所有する数少ない機械で加工しているとデザインの発想もその機械加工に縛られがちで線や面も直線的になりやすいです(わたしだけかも)。ところが手加工に慣れてくると「機械で出来なきゃ手でやれば良いじゃん!」となり、デザインの自由度が広がります。それは全体のデザインは勿論ですがパーツの些細な箇所にも生きてくると思っています。これはCADと手描き図面にも当てはまります。
話は少し離れますが、木工屋になった当初、機械加工がメインでまともに使った手道具は平台鉋くらいでした。単品であるのにその都度治具を作っていて、気が付けば一度しか使わなかった治具が増え埃が積もっていました。今は補機や治具を作る時は汎用性のあるものにしています(単に端材ってことも多々ありますが)。

1タイプ4樹種の椅子パーツ

さて椅子ですが、箱物やテーブル、机などと比べると圧倒的に手加工が多いです。何せ直線が無い肉体を支えるものですから。公園のベンチでさえ昔は板を平らに並べただけだったのが今では曲面に並べてあります(昼寝には不向き‥‥)。オーダー家具を作る木工屋としては平らな座板や背板などはあまり好みません。
パーツごとに見ていきます。 続きを読む 椅子は手加工が多い